健康食品の効き目が違うのは個人的な体質の差か

医薬品と健康食品の違いを示すときに、「医薬品は誰にも同じように作用するのに対して、健康食品は個人差が大きくて効果がある人がいる一方で、効果がない人がいる」というようなことが言われています。健康食品の善し悪しではなくて、すべては個人差といったことも言われるのですが、作用機序(メカニズム)が明らかになっているものを使っても、効果の有無の差が出ることはよくあることです。例としてあげるのは、血糖値に影響するとされる健康食品です。
血糖値が上昇するメカニズムの第一は糖質がブドウ糖に分解されるからで、これに作用しているのはαグルコシダーゼという消化酵素です。この酵素の働きを阻害する作用がある成分を用いた医薬品がαグルコシダーゼ阻害剤で、糖尿病治療で初めに使われる医薬品の成分です。それと同じ作用はある健康食品としては桑の葉、グァバポリフェノール、サラシア、豆豉エキスなどがあります。
次に使われるのはブドウ糖の吸収阻害の作用ですが、この働きをする健康食品としてはギムネマ・シスベスタ、難消化性デキストリン、シクロデキストリンがあります。この作用をする医薬品はありません。分解阻害と吸収阻害のメカニズムは明らかなので、同じものを使えば、糖尿病患者なら同じように効果があってもよいはずです。しかし、そうはいかないのは糖尿病や、その予備群はインスリンの分泌量が違っていて、インスリンが少ないと細胞の中にブドウ糖を取り込む作用があるGLUT4が細胞膜まで近づかないからです。インスリンの分泌量が少なくても、運動をするとGLUT4が動いて、ブドウ糖の取り込みが始まります。
この結果をみると、血糖値を下げる働きがある健康食品を摂って、効果に差が出てくるのは体質の違いというよりも、運動をしているかどうか、どれくらいの運動をしているのか、さらに言えばGLUT4を働かせるAMPキナーゼという酵素が活性化する運動であるのかどうか、ということが健康食品の効き目にも大きな影響を与えていることがわかります。