免疫細胞の数は腸内細菌よりも多いのか

日本人の腸は長いことが知られています。平均的には8.5m(メートル)といわれています。その長さの腸の中に棲息する腸内細菌には、どれだけの数なのかは気になるところです。気にして、どうなるのかという人もいるのですが、メディアから問い合わせがあったときに「そんなことを気にして、どうなるのですか」というようなやり取りをしながら、資料を引いたら、すぐでデータが出てきました。2兆個あることを伝えたところで、“ピッタリ2兆個”であるわけではなく、“2兆個と言われていても実際に数えたわけではない”というような余計な話をしました。
普通なら2兆個に食いついてくるところでしょうが、そこはスルーされて、「これは多いのでしょうか」という質問をされました。多いか少ないかの判断をするには、判断基準が必要です。とはいっても、免疫細胞を比較対象するデータを探すのは難しいので、とりあえず人間の全身の細胞の数を例示しました。人間の細胞は約60兆個といわれています。全身の細胞に対して2兆個というと想像するのは簡単です。細胞の30分の1となると、それなりに全身の細胞に影響を与えるであろうことは感覚的にわかります。
体内に最も多く存在しているのは腸内細菌です。その数は今では1000兆個といわれています。以前は腸内細菌は100兆個以上であると言われ、約100種類と言われたものです。これが200兆個、300兆個との発表があり、今では1000兆個とまでいわれるようになっています。急に増えたとか、日本人は特に多いということではなくて、さらに腸内の細菌を一つずつ数えた結果ということではなくて、だいたいの推定数です。1000兆個に対する2兆個となると、それほど多い感じはしなくなります。
免疫細胞の数を気にしているのは、腸内にいる免疫細胞の数が明らかになってきたからで、その数は1兆4000億個です。もちろん、ピッタリではなく、約の数です。免疫細胞の数は、腸内細菌の数に比べたら少ないということですが、免疫細胞は一つの細胞に働きかけるものではなくて、次々と別の細胞に働いていきます。ということは、免疫細胞1個が平均42個の細胞に働きかけるというのは、これだけあれば充分に働くことができるのがわかるということです。