入浴の消費エネルギー量は多いのか

入浴することで運動と同じくらいのダイエット効果があるという話は、いろいろなところで論じられています。どれくらいの消費エネルギー量があるのかということも情報源によって異なっています。実測データを示して、「1時間入浴すると100kcalの消費」と示しているところもあれば、10分間で100kcalという情報もあります。10分間で100kcalというのは私たちが最高レベルの入浴法を結果が出やすい人で実施して得たデータでもありますが、誰もが同じような結果が得られるわけではありません。入浴は本来なら疲労回復、健康維持のためのもので、運動の代わりではないはずですが、短期間で結果を出したいからと無理をしてでもというアスリートのための方法を、やってはいけない人もいるのは当然のことです。
入浴の消費エネルギー量については、日本体育協会のスポーツ科学委員会によって発表されています。このほかにも発表データはあるのですが、公式のデータとなると、これが採用されています。入浴による消費エネルギー量は体重1kgについて1分間の入浴で0.0606kcalとなっています。これで計算して基本的な数値を出してから、性別と年齢による補正係数をかけて、それぞれの人の消費エネルギー量を計算します。
補正係数は、20〜29歳の男性を1とした場合に、同年代の女性で0.95、30〜39歳の男性で0.96、女性で0.87、40〜49歳の男性で0.94、女性で0.85です。これで計算すると、20代で50kgの女性が10分間の入浴をすると「0.0606kcal×50kg×10分×0.95」で28.785kcalとなります。20代で60kgの男性の10分間の入浴では36.36kcalとなります。
この数値は40℃の入浴温度で、交感神経の働きが盛んになる42℃になると1.3倍と計算されています。この場合は女性で37.42kcal、男性で42.268kcalです。42℃の湯温では10分以上の入浴は脳が温まりすぎてのぼせの原因となります。そこで半身浴に切り替えます。半身浴では、さらに1.3倍の消費なので、10分間、腰から下をお湯につけて休んでいるだけで女性で48.65kcal、男性で61.45kcalとなります。まだ100kcalには足りないようですが、全身浴に続く半身浴を休憩と考えると男性では100kcalに達成します。体重が多いほど、糖と脂肪の燃焼に必要な栄養素が充分に足りていると男性では、半身浴だけでも100kcalほどにもなるのです。
効率のよい半身浴の方法ですが、先に42℃以上の全身浴で身体を充分に温めてから10分間の半身浴を行います。半身浴は交感神経の働きを盛んにした状態で行うことで、血流が盛んになり、のぼせることもなく続けられます。10分間と言わず、20分間でも30分間でも続けられます。身体が冷えてきたら交感神経の働きが低下するので、再び42℃以上のお湯で全身浴をするか、熱めのシャワーを浴びて再び交感神経に切り換えます。
よく「半身浴は身体が冷えて続かない」と言う人がいますが、正しい半身浴のメカニズムから言うと、そのようなことは起こらないということです。