全身の細胞にミトコンドリアがあるというのは本当か

全身の細胞は60兆個なのか37兆個なのかという議論はありますが、私たちの細胞の数が実際に60兆個であっても37兆個であっても、健康問題に特に大きな変化はないはずです。細胞の数を、わざわざ突っつくような必要はないのですが、ミトコンドリアの数の話になると、細胞の数は重要になります。ミトコンドリアは細胞の中にあるエネルギーを作り出す小器官で、いかに重要な器官であるかは細胞の40%ほどを占めていて、これを集めると全身の体重の10%にもなることからもわかります。
これは生命維持のためのエネルギーを作り出すという重要な働きがあるからですが、細胞によっては100個から3000個と大きな差があります。最も多く存在しているのは肝臓や腎臓、筋肉、脳といった盛んに働いているところです。平均すると一つの細胞に300〜400個の細胞があることになります。
これを基本数字として37兆倍もしくは60兆倍すると、全身のミトコンドリアの数が出てくることになります。ところが、この説を打ち上げている人は忘れていることがあって、全身の細胞というのは血液中の赤血球も白血球も含まれています。全身の赤血球は約26億個、白血球は約24億個とされていて、合わせて50億個となります。全身の細胞の数が37兆個だとしたら、赤血球と白血球を除いたら、なんとマイナス13億個となります。ということは全身の37兆個の細胞というのは赤血球と白血球、もしくは赤血球か白血球を含んでいない数ということになりそうです。
全身の細胞にミトコンドリアが存在しているというのは本当かという話題ですが、白血球にはミトコンドリアが存在していて、その中で作り出されたエネルギーによって活動して、免疫力を発揮しています。赤血球は骨髄で誕生したときにはミトコンドリアがあるのですが、成長して酸素を運ぶ能力をつけていく段階でミトコンドリアがなくなっていきます。赤血球の中にミトコンドリアがあったら、酸素を使ってエネルギーを作ることによって失われてしまうので、全身に酸素を運ぶという重要な仕事ができなくなるからです。
ということで、ミトコンドリアの数を計算するときには赤血球の分を差し引いてもらいたいところですが、それをしないまま掲載している書籍や教科書もかなり存在しています。