医師に適切な栄養指導を望めるのか

セミナーの質問コーナーで、よく聞かれることに「どうして医者は栄養指導をしてくれないのか」「栄養指導をしてもらったけれど中途半端な感じ」「言われたとおりにやったのに効果がない、血糖値が下がらない」といった不満があります。それに対して、「お医者様の栄養知識はレベル差が大きいから」と簡単に済ませることもあるのですが、詳しく聞かれたときには半分仕方なく、次のようなことを話すようにしています。
「医学部で栄養学を学ぼうとしても講座がない大学がある」という話をして、医学部を設けている81大学のうち4分の1にしか講座がないという話をすると、大抵の人は驚かれます。講座がある大学であれば、すべての医学生が学べるのかというと、必修ではなく、ほとんどが選択なので、まったく栄養学を学ぶことなく医師になることのほうが多いということです。
それでも栄養による病気予防は大きな社会ニーズなので、独自に学ぶこともあり、栄養学系の学会だけでなく、医学系の学会でも臨床栄養に関する発表も増えています。病院に勤務すれば栄養士がいるので、学ぶ機会は多くなります。真剣に学んでいることを期待したくても、そうでもない実態があります。というのは、医師は栄養指導をしても保険点数がつきません。だから、収入にはなりません。栄養士でなければ医療の現場で栄養指導をしても保険点数がつかない制度になっているのです。
日本メディカルダイエット支援機構の理事長の栄養学の師匠は、日本栄養士会の理事長だった現役時代に、この制度の旗振り役となり、病院栄養士には感謝され、食事療法を進めるには大きな力となったのです。医師の栄養知識の取得と医学知識をもった栄養指導の実践ということでは、どうだったのかと今にして思うと疑問が投げかけられています。
患者の立場として医師に向かって「大学で栄養学を学んだのですか」とか「医者になってから栄養学を学び続けていますか」とは聞きにくいところですが、そこだけはなんとかして聞き出しておきたいものです。後になって一生懸命に栄養学を学んだとしても、それぞれの人に適した方法を指導できるようでなければ、場合によっては何も伝えていないのと同じことになりかねない、という認識で医師との付き合い方を考えるようにしています。