卵は何個食べても大丈夫!の常識が通じなくなった

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」は5年ごとに最新版が発表され、次の版が出るまでの5年間使われます。2020年版は2024年まで使われますが、その内容をチェックしておかないと間違い情報を発信することにもなりかねません。最新版に更新された途端に、以前の常識が非常識になってしまうこともあります。今回の更新で、絶対に伝えなければならないのはコレステロールについてです。
2010年版まではコレステロールの1日の摂取量は男性で750mg未満、女性で600mg未満とされていました。それが2015年版では上限値がなくなりました。これは食事によるコレステロールの摂取が血中コレステロール値を上昇させ、動脈硬化のリスクを高めるという科学的根拠が得られなかったからです。コレステロールは悪玉扱いされることがあるものの、全身の細胞の材料であり、ホルモンの原料でもあるので、健康維持のために欠かすことはできません。そのために、肝臓で合成されています。その量ですが、血中コレステロールのうち80%ほどが肝臓で合成されたもので、20%ほどが食事由来のコレステロールとなっています。
コレステロールの上限値がなくなったということで、コレステロールが多く含まれているということで控えるように言われてきた卵は、どれだけ食べても血中コレステロール値が上昇しすぎることはない、動脈硬化のリスクが高まることはないということがメディアでも盛んに取り上げられました。
これに対して、日本動脈硬化学会が高LDLコレステロール血症患者には当てはまることではないと声明を発表したことから、「日本人はコレステロールを、いくら摂っても大丈夫という錯覚に陥っている」ということも言われるようになりました。
2020年版ではコレステロールについて脂質異常症の重症化予防を目的とした量として、1日に200mg未満にすることが望ましいことが記載されています。これは「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」を参考にしたものです。
全卵1個(50g)に含まれるコレステロールは240〜250mgなので、1日に1個くらいなら大丈夫ではあるものの、2個も3個も、それも毎日食べるというのは脂質異常症のリスクが高い人にとっては大丈夫とはいえないということです。