女性の発達障害は本当に少ないのか

発達障害は男女差が大きくて、全体的には男子は女性の2.4倍だとされています。これは文部科学省の調査による結果ですが、自閉症スペクトラム障害に限ると男子は女子の4倍にもなっているといいます。その理由について、母親の妊娠期間中の女性ホルモンの分泌が男児の脳に与える影響が考えられており、それについては以前に紹介したことがあります。今回の話は、それとは違って、本当に女性の発達障害は多いのか、多いとしても、そこまで大きな差なのか、という疑問についての考えを紹介します。
女子は、子どもだといっても女性は女性で、特に周囲から「女の子らしく」と言われ、そうなるように誘導されていると、大人ほどではないものの女性特有の行動をしがちです。そのために子どものときには発達障害であることが気づかれず、大人になってから発見されることもあります。それは本人も気がついていないということだけではなくて、本人は周囲と違うことに違和感があり、生きにくさを感じていても、それを親にも周囲にも言えないまま苦しんでいた、ということもあるのです。
自閉症スペクトラム障害は対人コミュニケーションが苦手ですが、男子の場合には集団行動ができず、一人きりで過ごすことが多いので、周囲からもわかりやすい特徴となっています。それに対して女子の場合にはもともと集団で動くことが平気なところがあり、他人とも適応しやすいこともあって、自閉症スペクトラム障害がわからないまま成長することも少なくありません。女の子らしい遊びは集団で行うことが多いことも関係しています。
対人コミュニケーションが苦手とは思えないように見えても、それは気づかれないだけのことで、本人は辛い思いをしていることがあるのですが、それだけではありません。女子でも男子と変わらないような集団行動が苦手、一人遊びをしたいということもあっても、そのことは女子の場合には目立ってしまうので、排除されやすいということがあります。また、自分の気持ちを抑えて付き合いをすることは、男子以上に心理的に不安を感じやすくなっています。自閉症スペクトラム障害では、普通の女の子として振る舞うことは辛くて、それを周囲に期待されることは、もっと辛いということを知ってほしいのです。