学習障害児に必要な指導内容3

文部科学省の「初めての通級による指導を担当する教師のためのガイド」には発達障害に関する部分があり、学習障害がある子どもに必要な指導内容について、前回に続いて紹介します。
(9)図形を含む課題に取り組む能力を高めるための指導
図形を含む課題が苦手な場合には、視覚認知能力や空間操作能力、器具の扱いに困難があるのかなど、その要因を明らかにした上で、間違い探しや回転課題など、観点を絞った基本的な図形の学習や、図形の特徴や操作を言葉に直すなどの指導を行います。
(10)位置や空間を把握する能力を高めるための指導
位置や空間を把握することが苦手な場合には、自分を取り巻く空間で身近な物の位置関係をどの程度把握しているかを明らかにした上で、ボディーイメージの形成や空間での位置関係の把握のため、学校周辺の地図の作成など実際に体験できる活動を取り入れるとともに、パズルや積み木模様などの構成などを行います。
(11)各学科の補充指導
子どもの状態などに応じ、学習障害の状態の改善・克服を図る特別の指導のほか、各教科の補充的な学習をすることも効果的である場合があります。これは、障害のない子どもに対して一般的に行われる個別指導での「発展的な学習」や「補充的な学習」とは異なり、学習障害が原因となって各教科の学習につまずきがみられる場合に、各教科の補充指導を行うものです。
例えば、得意な認知の仕方に応じた指導方法の工夫や、苦手な能力を他の能力を補完する手法の工夫(例:文字による伝達を音声による伝達に替える)などを行って、各教科の補充指導を実施することなどが考えられます。
(12)その他の指導
学習障害に起因する上記の困難は、それ自体にとどまらず、場合によっては、それらが複合化されて他のさまざまな困難に結びつくことがあります。例えば、位置や形を捉えることの困難により表情の変化が読み取りなかったり、読み書きの困難により語彙が貧弱だったりすることによって、ソーシャルスキルの習得、コミュニケーション能力の発揮や対人関係の形成などにおける困難となって現れる場合があり、これらに対応することも重要です。
また、学習障害により、自己評価の低下がみられる場合などにおいては、学習障害の理解や、それに伴う自己認知や自己有能感の向上という視点も大切です。これらの内容を取り出して特別に指導することや、さまざまな指導の中で配慮することなど、子どもの実態に応じて工夫することが必要です。