年齢に合わせた“口中調味”

口中調味は、口の中に調味料を入れること、調味料を使った食品を食べること、ではありません。“口の中で味を整える”ことを指しています。あまり噛まないで食べると、食品本来の味がわからないという意味で使われることもありますが、噛む話ではなく、いろいろな食べ物を一緒に食べるというのが本来の意味です。
食事の順番を見ると、洋食は初めにスープを飲み、次にサラダを食べ、少しパンを食べながらメインディッシュを待って、そのメインディッシュを楽しむだけ楽しむというのが通常のパターンです。このほかに副食がプラスされるメニューもありますが、どの食べ方にしても、それぞれの食事を元々の味付けで食べています。メインディッシュにサラダを合わせる、それにスープを追加して飲むということはなく、誰もがシェフが作った料理そのものの味を楽しんでいます。
それに対して、日本の食事は懐石料理では次々に出てくるものを食べるという、どちらかというと洋食に近い食べ方をするのかもしれませんが、通常の食事は順番こそ個人差はあるものの、ご飯を食べ、まだ口の中にご飯が残っているうちにおかずを食べ、そこに味噌汁を飲みという混ぜこぜの状態にしています。おかずの味が濃かったらご飯を口に入れ、薄くなったら味噌汁を飲みます。一口ずつ味を変えて食べているので、母親やシェフが作った味を、そのまま食べているわけではないということです。これはヨーロッパのマナーからしたら、マナー違反そのものという食べ方になっています。
しかし、これは日本人の“口中調味”であり、日本人の健康づくりの基本となっています。日本人は年齢を重ねると、だんだんと淡白な食事を好むようになってきます。それに対して欧米人は年齢を重ねても青年期の味付けを引きずっています。「老人ホームでは朝食からステーキを食べている」と言われますが、実際に見聞きした人は、その通りの食事だと話しています。
日本人は“口中調味”の食べ方をしているために、身体の状態に合わせて味を変化させていくことができます。疲れているときには口の中で薄味にして、元気を出したいときには濃いめの味にして、という調整をしています。それができることで体調に合わせて食事の傾向を変えていけるのが日本人の特徴で、これが日本人の健康を支えているのです。
こういった情報は、当法人の教育や情報発信の中に盛り込んでいます。