得点ゲームは脳トレになるのか

電車の中でタブレットを取り出している高齢者がいて、何か検索をしているのかと思って遠くから見てみたら、ゲームを頑張ってやっていました。頑張っての範囲を超えて、必死に画面に向かって指先を動かしていて、周りのことには気も回らないという熱中ぶりです。その内容はというと次々に登場する丸型のツールを消したり、移動させたりする得点ゲームで、どちらかといえば高齢者向けというよりもゲーム初心者がやるものという印象です。他の高齢者でも同じことを熱中してやっているシーンを見かける機会が増えています。
この話を雑誌記者にしてみました。というのは、高齢者でゲームというと脳トレを思い浮かべたからで、指先を激しく動かしていることで、認知機能を衰えさせないような気迫を感じたからです。すぐに疑問を解決する返答があります。「それはテレビ番組の影響で、脳トレによいゲームのイメージ画像が得点ゲームだったせい」とのことでした。これを聞いて、次にテレビ局の企画もののプロデューサーに連絡をしました。どんなゲームだったかを聞きたかったからですが、指先でタッチして丸い画像を消していくタイプのゲームであることがわかりました。つまり、私たちが電車の中で見かけた高齢者がタブレットの中でやっていたのと同じ種類のゲームです。
そのあと、知り合いのディレクターを通じて、テレビ番組の中で、どのように脳トレゲームをすすめていたのかを調べたところ、認知症の予備群である軽度認知障害を予防・改善するためには脳を刺激することが大切で、脳トレゲームがよいという話を紹介したとのことです。これは間違ってはいないのですが、脳トレに使われるゲームは得点ゲームではないので、画像が違っていました。しかし、その間違いが電波に乗って紹介されてしまうと、この得点ゲームが脳トレになる、軽度認知障害を改善するという話になってしまい、それを実践する高齢者を増やすことになっていきます。
得点ゲームが認知機能を改善してくれる少しでも効果があるなら、否定するようなものではないのですが、高齢者が画面に向かって必死の形相で熱中している姿を見ると、これは正しいことなのかと疑問が膨らんでいきます。その答えについては、脳トレの専門家に聞き取りをして、このコーナーで報告したいと思います。