患者の食事の要望が伝わりにくい理由

美味しくないものは何かと聞かれて、食べ物や料理をあげるのではなくて、「病院給食」と答える人は少なくありません。料理は少ない量を作るよりも多くの量を作ったほうが美味しくなるという意見もあるのですが、給食のように大量になると食べる個々の人には対応しきれなくなるということも起こります。
病院給食は、患者に合わせた栄養素を指示する医師の食事箋に従って、管理栄養士が献立にして、それを調理師が料理にして、看護師にバトンタッチします。これで一連の仕事は終わりということになるのですが、患者の立場としては、これで終わってしまっては困ります。病院給食は食べ終わるまでが一つの区切りです。もっと言うと、食べ終えた患者の反応や声がスタート地点の医師にまで伝わって初めて区切りがついたということになります。
料理の量は栄養摂取を計算して決められているので、全部を食べたのか、残したのかによって次の対応が違ってきます。残したということは、その分だけ栄養が不足した状態になっているので、不足分を次の食事なり間食なりで補うか、治療の内容を変えることにもなります。
残すには理由があって、量が多すぎて食べられなかったなら、量を減らしても必要な栄養素が摂れるようにするべきです。嫌いな食材が出されていたなら、同じだけの栄養素が摂れるように食材を変更します。苦手な料理もあって、洋食の味付けが食べにくい人には和食にするという方法もとられます。食材の切り方が大きくて食べにくいなら小さくカットします。消化がよくない人には消化しやすい調理法にします。彩りが単純で食欲が湧かないなら、カラフルな食材を使って、彩りが失われないように調理します。煮物が同じ味付けになっていれば、食材ごとに別の味付けにする方法もあります。
ここまでのことをするには手間がかかり、お金もかかることだというのは承知していますが、食べてもらってこその食事療法であるなら、できるところから始めるべきで、そのためには食事をしている患者の声が拾えて、上へと届けられる情報伝達体制が整えられることです。