感染拡大から考える安全のための基準

新型コロナウイルスの感染防止のために、するべきことが示されても、生活の自由と感染リスクの高さとの兼ね合いから、どこまで厳しくすればよいのか、どこまで緩めてもよいのかの判断がつきにくいことが多くなっています。
外出は控えるように言っているのに、健康の維持は必要なので運動は大切で、他人との接触がない外出は大丈夫というようなことを言われても、堂々と外出するわけにはいかなくなります。外出の許可証がないと家から出られないようにしているフランスでも、健康のための個人でのウォーキングは禁止されていないことからも、自宅に閉じこもっていればよいというわけではないことがわかります。
大規模イベントの開催は主催者の判断に委ねられ、自己責任で実施すると言われても、マスク着用、消毒実施、参加者の間隔、もしも感染が発生したときの連絡先の確認など、どこまで実施すれば大丈夫なのか、ということは誰にもわからないことです。ここまで実施したら感染は完全に防げる、もしも感染が発生しても責任を取らないで済むのか、ということも、またわからないことです。
感染クラスターにつながるようなリスクは、①換気の悪い密閉空間、②手の届く範囲に多くの人がいる、③近距離での会話や発声がある、という条件のうち3つの条件が同時に重なる場で高くなるということですが、どこまでの換気をすれば大丈夫なのか、どこまでの距離を開ければよいのか、どこまで会話や発声を規制すればよいのか、ということも具体的なことを数字で示してもらわないと、これなら安全という判断を下すことはできません。
その基準を示してほしいと願っても、「主催者の判断で実施するように」と言われたのでは、どうしてよいのかはわからず、判断基準も示さずに自ら責任を取ってもらいたいと言われても、強硬な実施をするわけにはいかなくなります。基準を示して、それを守った人への補償を国や自治体がしてくれるという状態にならないと、安心して行動することはできないのが現状です。