感染拡大から考える食べ物を通じての感染

新型コロナウイルスの感染ルートを解明する中で、食事を通じての感染がクローズアップされていました。大型クルーズ船で、客室から出ることができない人のために食事を運ぶ乗員(スタッフ)の手から食器にウイルスが付着して、これに触れて感染する接触感染が心配されました。しかし、一番の不安は、食器ではなくて、食器に入っているもの、つまり食べ物そのものです。食べ物からの感染というと食中毒が心配されるところですが、食中毒を起こす細菌と、ウイルスでは特徴が異なります。
細菌は数が少なければ発症はしないのですが、ウイルスは少しであっても感染すると寄生した細胞の中でたんぱく質を利用して増殖していきます。細菌は単細胞で、一つの細胞だけで生きていけるのに対して、ウイルスは細胞と違って生命維持に必要なものが欠けています。その欠けている部分を補うために生物の細胞に寄生しています。食べ物の中で特に危険度が高いのは生もので、屋形船でも食べ物を介しての感染で疑われたのは刺し身でした。
料理をした人、盛り付けた人、配膳した人の唾液に含まれてしまったウイルスは、食べ物とともに身体の中に入ってきてしまいます。生の魚が危ないとなると、他の人の口元を通過してきたものを食べることになる回転寿司を食べるのには勇気が必要です。これは料理をした人ではなく、食べる人のほうの問題ということですが、それと同じ伝でいくとバイキングも同様に危険といえます。大型クルーズ船の場合も朝食はバイキングでした。ちなみにバイキングというのは日本の呼び名で、帝国ホテルが発祥です。ビュッフェはフランスのbuffetが語源で、内容的には同じです。
安全を重視したビュッフェ方式のレストランでは料理を覆うようにカバーがされていて、カバーの下側から料理を取るようになっています。これが衛生的な方法かと思っていたら、アメリカのカフェテリア(セルフサービス食堂)はカバーが大きく被さっていて、横から手を出し入れないと料理を取りにくくなっています。それが不便だと文句を言うのではなくて、安全な方法だと褒められるのがアメリカです。便利さのほうを優先したのが簡単なカバーしか使われていない日本だということです。