朝食を食べる理由はブドウ糖とビタミンB群の補給だけか

人間は朝食と夕食を食べてきたという歴史的背景から、脳の唯一のエネルギー源の保持時間が15時間なので朝食抜きはエネルギー不足になること、エネルギー代謝のために必要なビタミンB₆とビタミンB₁₂は体内で12時間ほどしか保持されないので朝食抜きは代謝の低下につながるということを紹介してきました。その二つだけでも朝食を食べなければならない理由としては充分とは思えるのですが、睡眠に関わる講習会のときにメラトニンの話が出て、そのときに朝食でメラトニンの材料となる食品を摂らないと、よい眠りが得られないという説明をして、この理由も三つ目として加えたほうがよいのでは、と思ったものです。
メラトニンは睡眠の調整に関わっているホルモンで、アメリカでは医薬品が市販されていますが、日本では許可されていない成分です。というのは、食品に含まれる成分を摂ることによって体内で合成されるからです。その成分というのは必須アミノ酸のトリプトファンです。トリプトファンを摂ると、そのままメラトニンになるわけではなくて、セロトニンになってからメラトニンになります。セロトニンは脳内の神経伝達物質で、セロトニンが増えることは脳の活性化、認知機能の向上にも役立つわけです。
トリプトファンを摂ってからセロトニンに変化して、メラトニンに合成されるまでには時間がかかります。メラトニンによって快適な眠りを得るためには、朝食のタイミングでトリプトファンを摂るのが効果的で、この仕組みから朝食の重要性を伝えています。そのトリプトファンが多く含まれる食品ですが、大豆製品(納豆、豆腐)、卵、肉、魚、乳製品などで、これらの食品を朝食で食べるのは理にかなっているわけです。朝食は軽く済ませる人も多くて、パンにジャム、コーヒーか紅茶というメニューだけの人もいます。これでは糖質は摂れても、ビタミンB群が不足するし、トリプトファンも摂れないということにもなるので、健康の維持増進のためにはメニューの見直しが必要だということです。