栄養の学会の発表の正確性

ある著名な医学研究者の一般向けの書籍を、テレビ番組の参考資料のためにと読んでいたディレクターから「日本栄養学会の連絡先はわかりますか」と問い合わせがありました。この手の検索はネットですぐにわかりそうなものですが、それをわざわざ聞いてきたのは検索に引っかからなかったからです。その書籍は、私たちのライブラリーにもあったので、日本栄養学会なる団体が発表したというデータが出てきました。それは腸内細菌のビフィズス菌の割合のデータです。
そのデータの出所と内容確認をしようとして連絡先を、ということになったのですが、学会がデータ発表を行うのは、なかなかなくて、大抵は学会の会員の研究データです。そこのところを調べたいというのは当たり前の気持ちです。
日本栄養学会というのは、多くの医科学系の学会や会員の研究者と付き合ってきた私たちも知らない学会名です。栄養の世界で有名なところでは、伝統があって公益社団法人にもなっている日本栄養・食糧学会がトップです。その中から医学系の先生方が立ち上げた日本臨床栄養学会、栄養改善を目的にしたその名も日本栄養改善学会がすぐに思い浮かぶ学会です。どの学会も、私たちの顧問や相談役などが一時期、学会のトップになっていたので、学会発表であったら簡単に調べられることです。
ひょっとしたら詳しい専門分野に絞って研究している学会の発表かとも思い、栄養関係の学会を調べてみました。日本病態栄養学会、日本脂質栄養学会、日本静脈経腸栄養学会、日本外科代謝学会、日本健康・栄養システム学会、日本微量栄養素学会、日本リハビリテーション栄養学会、日本在宅栄養管理学会、日本小児栄養消化器肝臓学会と出てきて、さすがに日本スポーツ栄養学会、日本ペット栄養学会となると違うのではないかと思いつつも、一般社団法人ヒトケミカル研究会の広報のためにリストアップしたばかりだったので、それぞれ調べてみました。
国内の乳業メーカーが学術誌に発表して、それを複数の学会で発表したもので、中には研究発表ではなく、料金を支払って発表させてもらうランチョンセミナーはポスター展示も含まれていました。ということで、どの学会というのではなく、栄養の学会と書くべきところを編集なのか代筆した人が日本栄養学会としてしまい、それが校正者の目も通り抜けて出版されたということのようです。
この話を書きながら、学会発表と書かれていても、どんな学会で、どんな形で発表されたのかで信頼性を正確性が異なってくるので、それには注意したほうがよいとディレクターには話をさせてもらいました。