栄養指導が的確にされない理由を考える

病院やクリニックで医師から食事の指示をされたことがある人なら、「もっと的確な指示をしてほしい」と感じたことが多いかと思います。「指示もしてくれなかった」「食事について書かれたプリントを渡されただけ」という人のほうが多いかもしれません。こんな書き出しをしているのは、日本メディカルダイエット支援機構のメンバーも、栄養指導の内容がわかりにくくて苦労をさせられたことがあるからですが、その理由として一番に指摘されているのは失礼ながら“勉強不足”です。
病気の予防にも改善にも食事の内容は重要で、中でも生活習慣病となると、その生活習慣の多くを占めるのは食事であるので、今の時代には医師なら栄養のことを学んでいて当然と考えるかもしれません。
ところが、医学系大学82校の医師科(医師養成コース)で栄養学を学べるのは20校ほどでしかありません。栄養学を医師の卵が学びたくても、学べない環境の大学のほうが多いのです。栄養学の講座があっても選択制ばかりで、栄養学を学ばなくても卒業して医師国家試験を受けることができます。中には1校だけ、ほとんどの医学生が栄養学を学んでいるといわれる徳島大学のような特例はあるものの、栄養学を学ばないまま卒業して医師になり、医療現場に出てから必要を感じて自ら学んでいるというのが現状です。
非常に知識レベルが高い方々なので、医師になってから学んでも大丈夫では、と考える向きもあるでしょうが、成り立ての医師の忙しさは尋常ではありません。しばらくたった若い時代の医師も忙しさに変わりはありません。その忙しさの合間を縫って、すぐに役立つかわからない栄養学を学ぶというのは大変なことです。学んだにしても、どうしても専門とする分野に偏りがちで、全体像を個人で学ぶのは本当に大変なことです。基礎を学ばずに応用だけを学んでいると間違いを起こしかねないのが世の常です。
大学で栄養学の基礎を学べるようにするために、大学の講座に入れることを呼びかけている医学系の学会もあるのですが、それよりも医師国家試験に栄養学に関わる問題を増やして、その点数を増やせばよいのでは、という意見があるものの、実施は難しいようです。