栓を抜かないのに“栓抜き”という理由

日本メディカルダイエット支援機構のメンバーは、工場見学が好きです。中でも大好きなのがビール工場の見学です。只でビールが飲めるから、という理由を否定するつもりはないのですが、ビール工場見学をウォーキングイベントのコースの最後に入れると、喉が乾いてきてビール飲みたさに頑張って歩く人が増えたり、ビールは健康維持によくないと思い込んでいる方々が実はビールには健康効果があるということに気づいて、これが健康づくりのきっかけになるということもあって、大いに活用させてもらっています。
工場見学では「ビールに関することなら何でも聞いてください」という解説の方の言葉があって、いつも聞いているのが「ビンビールはワインのような栓ではなくて王冠を抜くのに、どうして“栓抜き”と呼ぶのかということです。明治時代になって初めて作られた国産のビールにはコルク栓が使われていたので、これは間違いなく栓を抜いていたので、その名残りで“栓抜き”と呼ばれ続けているというのが、これまでの定説でした。コルク栓ではビールの発泡で抜けてしまう可能性があるので、針金でコルクとビンが結び付けられていました。
キリンビール岡山工場で、このことを聞いてみたら、案内係の女性が「王冠は王冠栓とも呼ばれているので栓抜きで合っている」という返答をしてくれました。明治21年に販売されたキリンビールはスペイン製のコルクを使用していたそうで、キリンビールの関係者の説明には、なんとなく納得もしたところです。ちなみに当時のキリンビールは聖獣の麒麟のラベルにしたもので、販売していたのはキリンビールの前身のジャパン・ブルワリー・カンパニーでした。その後に登場したのがアメリカで開発された王冠(クラウン)で、明治40年に大日本麦酒(アサヒビール、サッポロビールの前身)が、明治45年に麒麟麦酒が採用しています。
王冠を抜くことから、英語ではcrown openerと呼ばれています。bottle openerと呼ばれることもあります。ボトル(bottle)に詰まった栓を抜くので、bottle openerとなるのですが、ボトルから抜くものというと、どうしてもイメージはコルク栓です。
王冠を栓のように抜くというので栓抜きというのはわからないではないのですが、昭和56年に制定されたJIS規格(日本工業規格)では「王冠抜き」と規定されていました。これからすると栓抜きではなく、crown openerが正しいのではないかと思えてきます。この論議は、まだまだ続きそうな感じです。