栓抜きは本来はビールに使われる言葉ではない

日本メディカルダイエット支援機構の理事長は、生ビール飲み放題の地域に生活している、ということを言います。理事長が住まう岡山市東区瀬戸町万富は、JR西日本・山陽本線の万富駅から近いところで、駅の裏側はキリンビール岡山工場です。西日本のビールの生産地で、地域の住民は工場見学で、出来立てのビールを楽しむことができます。1回の見学で飲み放題とはいかなくても、工場見学は自由で、1回について3杯はビールを飲むことができます。何度も通えば飲み放だ、ということです。そこで振る舞われるビールは生ビールで、サーバーから直接注がれるので、瓶ビールを飲むときに必要な“栓抜き”は必要ありません。ですが、見学ルートには世界の変わり種の“栓抜き”が展示されています。
この“栓抜き”という言葉に引っかかりを感じます。“栓”というのは、瓶の注ぎ口の中に入れるもので、ワインでいうとコルク栓を一般に指しています。穴の中に押し込んで、中身が出ないようにするものが栓であるわけですが、その定義からいうと、ビールの瓶に使われている蓋(ふた)は、どう考えても栓ではありません。瓶の注ぎ口をふさいでいるのは王冠です。王冠というのは日本の呼び名で、世界的にはクラウンと呼んでいます。クラウンの日本の呼び名が王冠です。
海外ではクラウンを開けるものはクラウンオープナーで、王冠を開けるものという意味で、王冠もしくはクラウンと呼ばなければならないところですが、それを取るのは、どう考えてもクラウンオープナーです。
どうして栓抜きという言葉が生まれたのかというと、日本でビールが生まれた明治時代はビールでは栓が使われていました。ワインと同じ形です。これだと発酵が進み続けているビールは発酵による泡のために栓が飛ぶことになります。そこで、ビールを作るときには、コルクの栓ではなくて、中身を押さえることができる王冠になりました。
ところが、コルクの時代に使われていた栓抜きの名前だけが残って、今も使われています。このことを、キリンビール岡山工場の見学コースを聞いてみましたが、「そうえば、どうしてでしょう」という返答があって、専門家(?)でも的確に伝えられていないのかと思ったものでした。