機能性成分は栄養素ではないのか

栄養学を専門とする栄養士や管理栄養士、中でも医療関連施設や大学などで働く管理栄養士の中には栄養の話というと、いわゆる栄養学の範囲に終始することがあります。栄養学の範囲というのは、三大栄養素の糖質、脂質、たんぱく質のほかに、ビタミン、ミネラル、食物繊維を加えた六大栄養素を指しています。この栄養素を充分に摂っていれば、他の栄養素、つまり健康食品に含まれている成分を摂る必要はないという考えにつながっていきます。
臨床医と、病院の管理栄養士と栄養士が連携して学び合う日本臨床栄養協会が、健康食品の専門家であるサプリメントアドバイザーを認定教育している時代には、特定保健用食品や機能性表示食品を国が認めている時代には、そして患者の多くが健康食品を用いている時代には、身体に影響することが確認されている機能性成分を摂る必要がないという考えが、栄養指導をされる患者などに通用するのかという話です。
このことは栄養現場と離れているところから勝手に言っていることではなくて、病院の管理栄養士や臨床栄養の医師と長年、付き合ってきたからの感想です。もちろん、機能性が認められている食品や成分を摂れば、あたかも医薬品は必要でないというような印象を抱かせる表現には疑問を感じています。卑近な例では、脂肪の吸収を抑える効果がある黒烏龍茶を飲めば肉を多く食べてもよいというのは間違いで、どれくらい抑えられるのかというと、肉一切れ分の脂肪だったということがあります。
機能性表示食品は科学的な試験で有効性が認められた成分が、同じだけ入っているということで表示をして販売できるものですが、試験をした人の条件によって効果の範囲が異なってくるのは当然のことです。医薬品の試験なら六大栄養素の摂取状態を同じにして、同じ条件のもとに試験をしています。それでも条件が異なる人の場合の違いは評価されていないのですが、健康食品では基本となる栄養摂取に凸凹(でこぼこ)があったのでは、結果が異なるというのは普通に想像ができることです。
もう一つ考慮しなければならないのは、三大ヒトケミカルの体内量です。全身の細胞の中にあるミトコンドリアは生命維持と活動のためのエネルギーを作り出す小器官ですが、その中にブドウ糖と脂肪酸を取り込んでエネルギー化を促進させるのが三大ヒトケミカルのR‐αリポ酸(天然型のα‐リポ酸)、L‐カルニチン、コエンザイムQ10です。三大ヒトケミカルは体内で合成されるものの20歳をピークに減少をしていき、減少につれて代謝が低下していきます。三大ヒトケミカルの量がエネルギー産生に影響をして、それが機能成分の効果に大きく影響を与えているので、三大ヒトケミカルの評価は機能性の評価に欠かせない要素となっているのです。
α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。