歩き始めには脂肪の燃焼量は減るのか

ウォーキングを始めたときには、ブドウ糖の燃焼が増える分だけ、脂肪酸の燃焼が減るということがメディアでも伝えられています。これは本当のことなのかというと、見方によって結論が違ってきます。血液中の中性脂肪はブドウ糖と並ぶ重要なエネルギー源で、体内では普段からエネルギー源を使って活動のためのエネルギーを作り出しています。もちろん個人差はあるのですが、平常時にはブドウ糖60%:脂肪酸40%くらいの割合で使われています。脂肪酸は中性脂肪の構成要素で、グリセロール1個に脂肪酸3個が結びついたのが中性脂肪です。
運動をしたときには、すぐに大量のエネルギーが必要になるので、燃焼しやすいブドウ糖を多く使います。そのため、エネルギー配分はブドウ糖80%:脂肪酸20%くらいに変わります。この変化を見ると、まるで脂肪酸の燃焼量が半分に減ったかのように見えもするのですが、歩くだけでも平常時(安静時)の3倍ほどのエネルギー量となっています。ということは20%であっても、平常時の量から比べると1.5倍になっているということです。
ブドウ糖は、すぐにエネルギーになるとはいっても10~15分間しか大きなエネルギーにはならないため、その時間を過ぎると脂肪酸へと主に使用するエネルギー源が切り換わります。このときのエネルギー配分はブドウ糖35%:脂肪酸65%くらいに変化します。血液中の中性脂肪が多い場合には、10~15分間を超える運動時間が必要で、できれば30分間以上のウォーキングをするようにすることがすすめられます。
ウォーキングによって、内臓脂肪がエネルギーとして使われやすいのは全力で運動をしたときの50~60%の負荷がかかった状態です。歩くスピードとしては、スタスタという感じで、腕を前後に大きく振りながら、歩幅も広くする歩き方が該当します。
有酸素運動は30分間ほど続けることで、15~20分間、脂肪燃焼を盛んにできるわけですが、30分間のウォーキングの時間が取れないときには10分間のウォーキングを1日に3回行うことでも同様の効果が期待できます。10分間のウォーキングでは脂肪の減少が少ないように思われるかもしれませんが、そのときにも脂肪酸が20%ほどは使われています。それに加えて、運動を終えてからも筋肉の中にある脂肪分解酵素のリパーゼが働いている30分間は脂肪酸が燃え続けています。1日に1回のウォーキングよりも、3回に分けて歩いたほうが運動後の脂肪減少の機会が3倍になっているので、中性脂肪の減少には、それほど大きな差は出てこないのです。