歩くだけで「うつ病」予防

歩くことは脳の血流を増やして、新鮮な酸素を多く脳細胞に届けられるようになることから、認知機能の改善や、うつ病の予防につながるとされています。どれくらい歩けばよいのか、ということについては中之条研究の中に目安が示されています。中之条研究は群馬県中之条町の高齢者約5000人を対象に1日の歩数と健康状態を調査して、予防効果を示したもので、うつ病の予防については「1日に4000歩、5分間の中強度の早歩き」という目安となっています。
うつ病は気分障害と呼ばれているものの、単なる気分の問題ではなくて、気分の落ち込みや、喜び・興味の減退などの症状が長く持続して、日常生活にも支障をきたすようになった状態を指しています。気分の落ち込みは誰にもあることであっても大抵は時間とともに気分は晴れていくものです。ところが、時間を経過しても気分が晴れることがなくて、精神的な状態だけでなく、身体的な落ち込みも続いてしまいます。
うつ病の患者は110万人を超えていて、特に働き盛りの40代では5人に1人(約19%)と非常に多くなっています。一生涯の有病率は3〜7%とされていて、誰でも発症する可能性はあります。それだけに日常的な行動によって改善できれば、こんなによいことはありません。うつ病の大きな原因としてストレスがあげられていますが、歩くことはストレス解消に簡単に結びつきます。
歩くと脳内ホルモンのセロトニンが増えることが確認されています。セロトニンが欠乏すると、うつ病の原因になることが指摘されています。セトロニンは走っても増えるのですが、歩くことに比べると増加の度合いは低くなっています。歩いて増えるといっても、疲れが残るほどに歩いてしまうと、セロトニンが減ることが確認されています。ストレスがかかるような状態になってはいけないということです。
セロトニンは腸内細菌によって腸内で多くの量が作られていますが、血管と脳細胞の間にある血液脳関門をセロトニンは通過することができません。脳内で作られることが重要であるので、腸内環境を整えるのは必要ないとは、もちろん言わないのですが、歩いてセロトニンを増やすことを考えるようにしたいものです。