歩数計と万歩計の違い

前回の歩数計の歩数記録を信じてよいのか、という話を受けて、何人もから同じ質問がありました。「歩数計と書かれているということは万歩計なら大丈夫か」という内容で、万歩計の由来を知っているからの連絡でした。以前に万歩計をつけてウォーキングに来るようにと知らせたときに、歩数計を持っているのに、わざわざ万歩計を探し歩いて買ってきた人がいました。万歩計は山佐時計計器の登録商標です。一般には歩数計と呼ばれていて、これは化学調味料と味の素の関係と同じです。つまり、歩数計というときには万歩計も含まれていて、万歩計といったときには歩数計ではダメと考えられたようですが、そこまで深い意味で集合をかけた人は万歩計という言葉を使ったわけではなくて、自身が持っているのが万歩計だったので、そのまま万歩計と書いただけのことです。
万歩計が登場したのは、1964年(昭和39年)の東京オリンピックをきっかけに日本歩け歩け協会が設立され、翌年に「1日1万歩運動」が始まってからです。この年に初代の万歩計(万歩メーター)が発売されています。その後は各社から歩数計が販売されて、精度も高まり、歩数計をつけて歩くことで運動量を増やすモチベーションづくりに貢献しました。
中之条研究では1日に8000歩を歩き、そのうち20分間は早歩きをするのが健康づくりによいという成果も、歩数計の精度の高まりがあったからです。歩数と健康状態の研究をするときに、精度に大きな誤差があったのでは結果も正確には出ません。各研究では、私たちが行っているのと同じように、歩数計をまとめてつけて歩いて、その誤差を確認してから配布する、ということは、もちろんしているはずです。
1日に1万歩を歩くのが健康によいと長い間、言われてきましたが、今では中之条研究の成果を受けて8000歩でよいという話が広まっています。1万歩運動が始まった当時は食生活の欧米化が進み、運動量も減ったことから、1日の摂取エネルギー量が消費エネルギー量を300kcalほど上回っていました。この過剰分を運動で消費するには3000歩の歩行が必要で、当時は7000歩ほどを歩いていたことから合わせて1万歩となったわけです。
現在の歩数の目標は、厚生労働省による国民の健康づくり運動の「健康日本21」で示されています。第一次の健康日本21では1997年(平成9年)の調査をもとにして10年間の目標が定められました。当時の1日の歩数は男性が8202歩、女性が7182歩であったのを10年かけて1000歩ずつ増やすことが目標とされました。しかし、実際には800歩ほどずつ減ったという結果でした。そこで第二次の健康日本21では10年間で男性が9000歩、女性が8500歩を目標として示されてします。その結果が出るのは2022年です。