残された人生でできる社会貢献は何だろうか

腸の健康に関わることを毎日、このコーナーで紹介してきましたが、これは日本メディカルダイエット支援機構の相談役であった久郷晴彦薬学博士の追悼の意味もあって、長く続けてきました。久郷先生は森永乳業の出身で、退職されてから亡くなるまでの32年間にわたって、講演や書籍、テレビ番組を通じて健康情報を発信してきました。久郷先生から聞いたことで強く印象の残っているのは“人生3倍論”です。20歳までは親の世話になって自分のことに励んで成長し、20歳から60歳までの40年間は仕事と家族のために働く中で自分のことをしてきて、60歳を過ぎたら自分のやりたいことだけに取り組む時間が取れる、ということです。
実際には自分のことだけというわけにはいかないのが人生ですが、40年間は3分の1しか自分のやりたいことに当てることができなかった時間を、全部使うことができたら3倍ものことができます。定年から20年間なら60年分のことができるので、定年までの時間と、その後の時間でできることが同じということになります。定年から30年の90歳までなら90年分のことができます。3倍論の3倍というのは、30年間の3倍という意味ではなくて、自由に使える時間が3倍もあれば社会に有意義なことを残せるという意味として捉えています。
久郷晴彦先生は定年後に手がけた著書と監修書が165冊にも及びます。最後の書籍は90歳のときに発行された『大人の粉ミルク』(主婦の友社)です。最後に監修者として登場した同社の『月刊健康』では大人の粉ミルクの特集記事でした。粉ミルクは腸の健康やダイエットだけでなく、免疫から脳の機能まで、さまざまな研究がされていますが、その研究の走りが久郷先生でした。
久郷先生の義理の息子である日本メディカルダイエット支援機構の理事長は、自分の名前で出した書籍が1冊もないのに、これまで書いた書籍は182冊に及んでいます。あまりに様々な分野のことを書いてきましたが、こと健康に広く役立つ話ということでは、まったく異なる分野のことも今になって役立っています。
3倍の時間を、このまま健康分野に使っていいのか、悩んでいることを多彩な人脈に相談することもあるのですが、アドバイスを受けるよりも、どんな社会貢献があるのかを考えてもいないという方も多くて、戸惑いながらも、次世代の育成支援に蓄積してきた情報を役立てようという意識が強く、当方としても、そこに力を注いでいくべきであろうと考えているところです。