母子の栄養13 脳の発達に必要なブドウ糖

脳は発育のための重要な器官であることから、必要な栄養成分は通過させると同時に、不要な成分は通過させない仕組みがあります。それは“血液脳関門”といって、脳細胞の手前の毛細血管に備わっている関門(ゲート)のような仕組みです。

この血液脳関門によって、脳細胞のエネルギー源としてブドウ糖以外は原則として使われないようになっています。全身の細胞のエネルギー源はブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸ですが、脳細胞以外は脂肪酸もアミノ酸も通過して、エネルギー源となります。ところが、脳細胞は三大エネルギーのうちブドウ糖しか通過しないので、それ以外ではエネルギーを発生することができないからです。

ブドウ糖は、すぐにエネルギー化されるものの、長続きしないので、ブドウ糖が不足すると脳が正常に働かなくなるだけでなく、脳が全身の機能をコントロールしているだけに、脳の機能低下は全身の機能低下につながります。

子どもは、自動車にたとえると車体(ボディ)を作りながら入っているのと同じようなもので、ボディ製造のためにも機能を高めるためにも多くのエネルギーが必要になります。その多くのエネルギーは脳で使われています。

全身に使われるエネルギーのうち脳の重量は2%ほどでしかないのに、使われるエネルギー量は20〜25%にもなります。成長期の子どもの場合には大人の2倍ほど、場合によっては半分が脳のエネルギーとして使われています。

新生児では脳重量が11%であるのに対して74%、生後6か月では重量が12%でエネルギー消費量は64%、成長が進んだ10歳でも重量が4%で34%のエネルギー消費量となっています。

先に脳細胞のエネルギー源としてブドウ糖以外は原則として使わないと書きましたが、それは極端なブドウ糖不足になったときに体内で発生するケトン体が存在しているからです。ケトン体は脂肪の合成や分解の途中で肝臓の中で発生する中間代謝産物で、糖尿病や極端な糖質制限、飢餓状態などによってブドウ糖が充分に摂取できない状態になると、発生します。そして、血液脳関門を通過して脳細胞に取り込まれます。

それならばブドウ糖は必要ないのではないかと考えられることもあるのですが、ケトン体はあくまで危機的状況のときに発生して使われるものであって、常に発生させるのは異常なことです。ブドウ糖は出産後の子どもだけでなく、母親の栄養状態に影響を受ける妊娠中にも重要であることを、まずは知っておいてほしいのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕