毛細血管は毛の細さではなく蜘蛛の糸

毛細血管という言葉は毛のような太さということに由来していますが、この場合の毛は髪の毛ではありません。髪の毛の太さは0.08mmといわれていますが、欧米人は0.05mmなので、かなり太いことになります。髪の毛よりも細い産毛は0.01mmですが、毛細血管と比べると、かなり細くて、8μm(マイクロメートル)となっています。1μmは1000分の1mmです。この太さは毛のレベルではなくて、蜘蛛の糸の太さです。そんなにも細いところが身体の中に占める割合が低ければ、毛細血管の血流に影響が出たとしても、あまり健康面では問題はないのかもしれないのですが、毛細血管は全身の血管のうち約95%を占めています。
血管の長さは全身で約10万kmといわれます。地球1周分(赤道1回り)は約4万kmなので、なんとも長い毛細血管が全身を駆け巡っていることになります。正しい表現をすると、駆け巡っているのは血液なので、“全身に張り巡らされている”というのが正しい表現となりそうです。
末梢の毛細血管に赤血球がスムーズに運ばれていけばよいのですが、という表現をすると、どれくらいの速度が普通なのかという疑問が出てきます。毛細血管の通過速度は1秒間に約0.5mmです。動脈の50cm、細動脈の5cmに比べると遅いものの、この速度で着実に赤血球が運ばれていれば、酸素も栄養素も不足することはないわけです。心臓の弁の開閉に異常が出る心臓弁膜症の場合には、どれくらいの速度になるのかというと、試験や研究者によって差はあるのですが、20%ほどは低下して、その分だけ運ばれる酸素なども減ると考えられています。
わずか20%と思われるかもしれないのですが、20%も不足したら、酸素を利用して脳細胞で作り出されるエネルギー量も20%ほどが減って、それが脳機能に影響を与えることになります。
血液がサラサラ状態なら、この程度の影響で済むかもしれませんが、血液がドロドロ状態になっていると流れが悪くなって、もっと酸素が届きにくくなります。毛細血管の太さは8μmであるのに対して、そこを通過する赤血球は10μmです。赤血球はつぶれるようにして狭い毛細血管を通過していきます。一つひとつなら通過しやすくても、赤血球がくっついたら通過しにくくなります。血液中のブドウ糖や中性脂肪が増えすぎると赤血球がベタついて2個だけでなく3個以上の固まりにもなります。こうなると酸素の供給量も低下するので、血流が悪い人は血糖値と中性脂肪値にも注意しなければならないということです。