水に税金を払って酒は飲みたくない

酒造りには良質な水が必要です。日本酒もビールも良質な水が得られる地域で良いものが作られています。卑近すぎる例ですが、岡山県の万富駅の裏側はキリンビール岡山工場で、近くには岡山三大河川の吉井川が流れています。この地域は有名な日本酒の酒米の雄町米の産地で、酒造りの前の米作りの段階から水が重要です。そういえばキリンビール岡山工場だけで作られている一番搾りには雄町米も使われています。酒造りには水が必要なことはわかっていますが、完成した酒に水を加えて薄めるとなると、これは話が違ってきます。
江戸時代は樽から日本酒を枡に注いでいたので、樽に水を加えて薄めて出すということがまかり通っていたので、瓶詰めが流通し始めたと聞いています。これなら水で薄めることができないので、誤魔化しがないことになります。江戸時代の日本酒は、今でいうところの原酒です。完成した日本酒を、そのまま瓶詰めするのが原酒です。ところが、一般に販売されている日本酒には原酒と表示されていません。原酒のアルコール度数は20度(%)くらいあります。一般の日本酒は15度くらいです。20度のものを15度にするために何をしているのかというと水を加えています。20度の日本酒に、その量に対して4分の1に相当する水を加えると15度になります。原酒でない日本酒を飲んでいるときには水に税金を支払って飲んでいることになります。
日本酒だけで作られている日本酒、というのは妙な表現かもしれませんが、日本酒の成分表示を見ると米、米麹のほかに醸造用アルコールが使われたものもあります。この他に水も使われていますが、原材料表示には記載されません。醸造用アルコールは味を調整するためのものと説明されていますが、ともろこしなどのでんぷんから作られたアルコールにアミノ酸、糖類、酸味料、甘味料などを加えたものです。なぜ使われるかというと、醸造用アルコールは100%アルコールなので、これを使うとアルコール度数が高くなり、水を多く加えると味が薄まるので、味を加えるために必要になるものがあるということです。
となると、ますます加えられる水が多くなり、ますます水に税金を払ってまで飲みたくない、という気持ちにもさせられます。