水素水は健康によいのか

健康関係や美容関係の展示会に行くと、いくつもの水素水の商品を紹介するブースが出ています。一時期に比べると少なくなったものの、全身の健康効果、美容効果を訴え続けています。科学の世界では裏付けは取れてはいないことになっていますが、水素水ブームの初期段階で厚生労働省の局長を務めた長寿医学の専門家が旗振り役をしたこともあって、期待は高く、人気も続いています。
医学の世界では、どうなのかというと、朝のテレビ番組の特集コーナーで水素水の話が医学面で取り上げられてから、他のメディア関係者からの問い合わせが急に増えました。水素が有効だと考えられているのは抗酸化作用です。水素は原子番号1番のシンプルな形で、Hで表されます。電子は陽子1個、電子1個だけで、電子の受け渡しがスムーズに行われます。
活性酸素は酸素の電子のバランスが崩れたもので、通常の酸素(O)はプラスとマイナスの電子4対で構成されているのに対して、活性酸素はマイナス電子が1つ欠けた状態になっています。この欠けたマイナス電子を他のものから奪って正常な酸素になろうとしますが、奪われたほうはマイナス電子が欠けた状態になります。これが酸化で、血管の細胞が傷つけられると動脈硬化になりやすくなります。さらにLDLコレステロールが酸化すると免疫細胞のマクロファージが内部に取り込んで処理をして、限界に達すると活動を停止して血管壁に取り込まれていきます。この二つの変化によって、動脈硬化が進んでいきます。
活性酸素が発生したときに近くに水素があると、水素からマイナス電子が活性酸素に移動して普通の酸素に戻してくれます。電子が欠けた水素は酸素と結びついてH₂O、つまり水になります。こういった働きから、水素には抗酸化作用があるということになるのですが、その水素を水素水として取らなければならないかというと、そうとも限りません。
医学の世界では救急医療で大量に発生する活性酸素を消去するために水素ガスが使われています。活性酸素を消去するだけでなく、動物試験の結果ではあるものの抗炎症、血流促進、糖尿病とメタボの改善の結果が得られています。展示会では、この事実を表示しているところもあり、それと同じ結果が水素水で得られるというイメージを出していることもあります。しかし、医学の世界で使われているのは水素ガス(H₂)です。
水素ガスを、わざわざ水に溶け込ませて販売するのではなく、そのまま水素ガスを吸ったほうが効果はあるかもしれないということを伝えさせてもらっています。