治る認知症は本当に治るのか

認知症になったら治るものではなく、状態を軽くするしかできない、認知症の予備群とされる軽度認知障害の状態がみられた団体で、認知機能の改善効果があることに取り組むしかない、というのが医学会の認識です。ところが、セミナーの質問コーナーで「治る認知症があると聞いたのですが」という話が出ました。このセミナーは認知症をテーマにしたものではなく、有酸素運動の有効性に関するもので、その中で有酸素運動が認知機能を高めるという研究成果の一部を紹介していました。
治る認知症と聞くと、認知症になっても場合によっては治る可能性があるのではないかと聞き耳を立てている人が多くいたのですが、それに対する答えは「認知症は治らない」「認知症は発症を遅らせることしかできない」ということであり、質問に対する的確な返答としては「治る認知症というのは認知症ではない」ということです。
治る認知症と呼ばれているのは、認知症と同じような症状が現れる脳や身体の病気を指していて、診断で認知症と間違われやすいものを示しています。認知症と誤って診断されることなく、それぞれの病気に合致した治療を行えば、治すことができる病気となっています。
その病気としては、甲状腺機能低下症、ビタミンB₁₂欠乏症が内科分野ではあげられています。甲状腺機能低下症は女性に多い病気ですが、甲状腺ホルモンの治療薬で治すことができます。ビタミンB₁₂欠乏症はビタミンB₁₂が不足したために起こるもので、ビタミンB₁₂には脳からの指令を伝える神経の働きを正常に保つ働きがあり、注意力や集中力の低下、記憶障害、見当識障害(日時や場所がわからなくなる)が徐々に進んでいくことから、認知症と間違われやすくなっています。
ビタミンの不足というと一般には野菜を食べればよいと思われがちですが、ビタミンB₁₂は動物性食品に多く含まれていて、魚介類、レバー、乳製品、卵などに豊富に含まれています。ビタミン不足の解消というと、1日に1回は食べるようにしているという人もいるのですが、それでは欠乏症は解決できません。今は欠乏症となっていない人でも、将来的に欠乏症の危険性があります。というのは、ビタミンB₁₂の体内保持時間が短いからです。
ビタミンB₁とビタミンB₂は体内では24時間ほどは保たれます。そのために1日に1回、必要な量を摂っていれば不足するようなことはありません。ところが、ビタミンB₆とビタミンB₁₂は12時間ほどしか保たれません。となると、ビタミンB₁₂は1日に2回は食事から摂るかサプリメントで補うかしないということです。ビタミンB₁₂は重要な代謝成分であるので、メディカルダイエットのセミナーでも朝食と夕食で摂取することをすすめています。