洗浄した食器は熱くならないと除菌されない

業務用の食器洗浄機で使われる洗浄水は、水と書かれていても実際にはお湯が使われています。予備洗浄では低めの温度で洗い、洗浄水による主洗浄では温かいお湯で洗い、すすぎでは熱いお湯が使われるというパターンです。食器に付着した菌は食器の表面温度が71℃以上になると除菌されます。急に熱いお湯をかけても食器の温度は高まらないので徐々に温度を高めていくわけです。
このパターンで、それぞれの温度が決められているのですが、スイッチで温度調整ができるために、低めの温度にして使っているところがあります。その理由は食器が熱くて洗った後に持ちにくいことと、洗浄水の温度が高くなるほど多くの湯気が出るからです。洗浄水の温度を下げて、食器が充分に温まらなかったら除菌もされないことになります。洗浄水の温度を正しく設定している店で、食器に扇風機を当てているところがありました。これなら温度も湯気も解消されるとの考えからでしょうが、食器の表面の温度が下がるので、充分に除菌されないのは同じことです。
温度を下げている店では、「食器用洗剤で洗ってから、すすぎ用に使っているので大丈夫」というところもあります。すすぎ用なら温度を下げてもよいということはなくて、店舗はどんな菌を持っているかわからない複数の客が入ることと、強い洗浄剤を使っていると厨房内の菌が耐性を持って強力になることもあって、高い温度を確保する必要があります。
前回、説明したウォーターナイフ効果を得るためには食器と食器の間隔をあけないといけないのに、すすぎのためだから食器の上をすすぎ水(お湯)が流れれば大丈夫と考えている人もいます。しかし、完全に除菌をするためには温度とともに水流も重要になるので、決められた温度で決められた洗い方をしている店でないと衛生的と判断することはできないということです。