漢方素材は“レアメタル”か

漢方素材は漢方薬に使われる天然素材(生薬)のことで、レアメタルは希少金属のことで、まったく違っています。それをわざわざタイトルに掲げているのは、漢方素材の将来を考えるときに、レアメタルを比較対象に出さないといけないような危機的状況になっていることを知ってもらいたいからです。
レアメタルは、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジムム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、タリウム、ビスマス、そして希土類が一般に分類されています。
最後の希土類というのが実は問題で、レアメタルのうち特に希少なものを指していて、レアアースとも呼ばれています。それはスカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プリメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの17種類です。
強力な永久磁石に使われるネオジウムやジスプロシウム、強力なレーザーやテレビの蛍光体に使われるイットリウムなどが特に有名です。世界の埋蔵量の50%ほどは中国ですが、生産量になると80%以上にもなっています。日本の輸入量では中国に60%ほどを依存しています。
タイトルは「漢方素材は“レアメタル”か」ではなく、「漢方素材は“レアアース”か」としないといけないわけですが、我が国の漢方薬の素材の80%以上は中国からの輸入に頼っています。中国はレアアースを武器にアメリカの経済制裁に立ち向かっています。言うことを聞かないとレアアースの輸出を止めるという戦略を打ち出そうとしています。それと同じことが、日本の場合には漢方素材となっているのです。漢方素材はミカンの皮や柿のヘタなど身近なものも少なくないのですが、医薬品として使うためには数多くの条件があり、それをクリアして国内産の材料に切り替えていくには、これまでのような自治体の努力ではなく、国をあげての対策が必要だということです。