漢方薬は中国のものなのか

漢方薬というと、多くの人は同じイメージを抱くはずで、天然の植物などを乾燥させた成分を数種類混ぜたものです。その多くは中国産で、国内で加工用に使われている素材の約400万トンのうち日本国内で製造されているのは約2万トン、わずか0.5%でしかありません。国内で使われている漢方素材の80%ほどが中国からの輸入です。その差は何なのかというと、中国産の素材を日本で加工して海外に販売されている分です。日本から輸出される漢方薬は和漢と呼ばれています。中国のものは何かというと漢方ではなく中医薬です。
これもイメージからすると、中国では伝統的な漢方薬を作って販売していて、日本のものは現代の医学の薬品に近いものにしていると考えられがちですが、実際には逆になっています。日本の漢方=和漢は「かなり前から止まっている」と表現されることがあります。どんな意味なのかというと、和漢は江戸時代に確立された医学だからです。
漢方という名は中国を示す漢と治療法を示す方を組み合わせたもので、中国伝来医学を指します。伝統ではなく“伝来”です。中国からは各年代に数々の文化が伝来していますが、次々に中国から伝えられた医学は日本人に合わせてアレンジされて、独自の医学として発展してきました。江戸時代に西洋医学はオランダ(阿蘭陀)から伝わってきたので蘭方と呼ばれ、それに対して東洋医学は漢方と呼ばれました。後になって漢方では日本で独自に発展したことがわかりにくいことから和漢という言葉が使われるようになりました。
中国の方は、日本人にわかりやすいように「漢方」という言葉を使うことはあるのですが、中国では中医学であり、その中で使われる生薬は中医薬です。中医学という言葉は現在の中華人民共和国が設立されてから決められたものです。
ちなみに和漢薬という言葉がありますが、これは日本で発達した和漢の生薬を指す場合と、和薬と漢薬の両方を合わせたものを指す場合があります。