無臭ニンニクはニンニクではないのか

ニンニクの魅力はアリシンです。ニンニクにはアリインという硫黄を含むアミノ酸とアリナーゼという酵素が含まれていて、切ったり擦りおろしたりするとアリインとアリナーゼが反応してアリシンとなります。アリシンには強い抗菌作用があり、ニンニク特有の臭いの素となっています。アリシンはビタミンB₁と結びつくとアリチアミンになります。ビタミンB₁はチアミンとも呼ばれるので、アリシンとチアミンでアリチアミンというわけです。このアリチアミンが元気の元となります。
ビタミンB₁は吸収率が50%ほどですが、アリチアミンになると吸収率が2倍近くにも高まります。そして、体内に吸収されたあとにアリチアミンはビタミンB₁とアリシンに分解されるので、体内のビタミンB₁を大きく増やすことができます。ビタミンB₁には糖質をエネルギー化させるために必要であることから、糖質の代謝が進み、発生するエネルギー量が多くなるということです。
「それなのに、なぜニンニクを加熱して酵素が破壊された無臭ニンニクを食べるのか」という疑問は当然のように生まれることで、それを雑誌記者からも聞かれました。それに対する私たちの回答は、「もともとアリインが少ないニンニクを使っているから」。もっと言えば、「ニンニクではないものを使っているから」ということを伝えさせてもらいました。
無臭ニンニクとして販売されているものの材料はジャンボリーキです。ニンニクはネギ科ニンニク属ですが、ジャンボリーキはネギ科リーキ属で、一般には西洋ネギと呼ばれています。その根の部分がニンニクのような形となるのですが、ニンニクの8〜10倍もの大きさとなっています。だからはジャンボと名づけられ、エレファントガーリックという別名もあります。そんなにも大きいのに、アリインの量は60分の1でしかありません。
もともとアリインが少ないので、加熱しても問題がないということです。そもそも無臭ニンニクという名称は、ニンニクには特有の臭いがあって、それに対して臭いがないものを作って、無臭ニンニクと呼んでいたものです。それなのに、もともと臭わない材料を使って無臭ニンニクとして販売するのは「不当表示ではないか」と言ってきた人もいました。
ここまで読むと、ジャンボリーキの無臭ニンニクは効果がないような印象を抱かれがちですが、そんなことはありません。アリシンの効果は期待できなくても、サポニンが多く含まれています。サポニンは免疫と肝機能の強化で知られる成分です。また、イヌリンも多く、これは血糖値の上昇を穏やかにする成分として知られています。無臭ニンニクを食べると健康になるといわれる理由は、アリシンではなくて、これらの成分にあったのです。
無臭ニンニク製品の中には、アリシンが含まれることを記載してあるものもあり、強調しているものも見かけます。これは「不当表示では」と疑われても仕方がありません。