燗酒の温度は6段階もある

冷えた日本酒の話を紹介したときに、「燗酒の話は別の機会に」と書いたら、待ちきれないという人がいて、すぐにも話題にしたいというリクエストでした。復習から始めると、常温の冷や酒は20℃を基本としています。冷酒は3段階で、雪冷えが5℃、花冷えが10℃、涼冷えが15℃となります。
燗酒の有名なネーミングとしては人肌がありますが、人間の肌の温度は体温計の測定温度では36〜37℃です。日本酒の燗酒は少し低めで35℃です。一番低めの燗酒は日向燗で30℃、人肌燗は35℃、ゆる燗は40℃です。さらに温度が上がって、上燗は45℃、熱燗は50℃、そして最も温度が高い飛び切り燗は55℃にもなります。
日向燗は日向のようなポカポカとした温度で、旨味や酸味が出るようになります。人肌燗は米や麹の香りや、やわらかい味わいが目立ってくるようになります。常温の冷や酒(20℃)から徐々に温度を高めていくと、日向燗(30℃)までは甘みが増していきます。苦味がある酒の場合には温めることによって苦味が減り、代わりに甘みが強く感じられるようになります。
これ以上に温めると甘くなるのではなくて、辛口に感じられるようになります。ゆる燗は旨みや味わいがふくらんできて、純米酒は特においしさを感じられる温度です。上燗はあじわいのバランスとキレの両方が感じられる温度です。熱燗以上になると、これは味わいというよりも身体を温めるための酒となっていきます。
もちろん、酒質によって違いがあり、もともと燗酒用に造られたものは味の変化を感じやすくなっていますが、常温の冷や酒から冷酒での飲み方をすすめるものは温めるとおいしい変化ではなくなります。こういった味の変化も、飲む人の味覚によって異なってくるので、あまり温度による変化のことを考えるのではなくて、自分が一番おいしいと感じる温度で飲むようにしたらよいのではないでしょうか。