牛乳は朝に飲むべきなのか

一般的な常識は実は非常識というテーマはウケがよいようで、テレビ番組でも雑誌記事でも、よく取り上げられることです。中でも健康については関心が高く、私たちも、そういった観点で取り上げることが多いのですが、“非常識”と言い切っていることが実際には非常識だったりすることもあって、視聴者や読者を惑わせていることがあります。非常識と断言する根拠が一つの見方しかしていないこともあって、人間の身体の仕組みというのは、たった一つのことで決まることは少ないので、別の専門家にコメントを求めると逆の内容になっていることもあります。
テレビ番組で取り上げていたことを例にあげると、牛乳を飲むタイミングです。日本では朝に飲むことが常識となっています。海外では、いつでも飲んでいるので、何も朝に時間を定めて飲まなくてもよいというのが番組の結論です。テレビ番組では紹介されていなかったことですが、日本メディカルダイエット支援機構では、牛乳を日本人が朝に飲むようになった理由として冷蔵庫の普及との関係について話しています。
牛乳は終戦後に普及が始まり、牛乳屋さんに買いに行くことから、次に家庭に届けてもらう“牛乳配達”が始まりました。牛乳屋さんには冷蔵庫が普及していても、家庭にはまだ冷蔵庫が普及しきれていないことから、気温が低い早朝に牛乳屋さんから家庭に届けられ、朝のうちに飲むという習慣が広まりました。そこから家庭に冷蔵庫が普及してからも、牛乳は朝に飲むものと認識され続けました。
これが非常識かというと、そうとも言えません。むしろ朝に牛乳を飲む習慣となってよかったと考えています。夜によく眠れるようにするためには、セロトニンという神経伝達物質が必要で、セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンによって体内で合成されます。セロトニンは“幸せホルモン”とも呼ばれていて、睡眠を促すホルモンのメラトニンに変化します。このメラトニンによって夜になると眠くなり、熟睡できるようになります。
トリプトファンがセロトニンを経てメラトニンになるまでには15時間ほどかかるので、朝に牛乳を飲むのは熟睡のためにはピッタリのタイミングであり、これこそ常識としてほしいことです。