牛肉を食べるとやせられるのか

肉を先に食べる“ミートファースト”をテーマにしたテレビ番組で、ダイエット効果がある肉は牛肉だと紹介していました。その理由としてあげられていたのがL‐カルニチンの存在です。肉類に含まれているL‐カルニチンには、細胞のミトコンドリアの中に脂肪酸を取り込む作用があります。その仕組みについては番組では取り上げていなかったのですが、脂肪酸はL‐カルニチンと結びつくことによってミトコンドリアの膜を通過して中に入っていきます。ということは、L‐カルニチンがないことには脂肪酸はミトコンドリアの中でエネルギーとはならないということです。
L‐カルニチンは肉に含まれているということは、肉を食べないと脂肪の代謝が起こらないように思えてしまうかもしれませんが、L‐カルニチンはエネルギー代謝に必要な成分であることから体内で合成されています。しかし、その合成のピークは20歳で、これを過ぎると合成量が減り、蓄積量も減って、代謝が低下していくことになるのです。これが年齢を重ねると太りやすくなる理由となっています。
だから、L‐カルニチンが含まれている肉を食べるとやせられるという流れにしているわけですが、番組では一番多いのは牛肉だと紹介していました。100gあたり鶏肉は9.1mg、豚肉は35mgであるのに対して59.8mgも含まれている数字を示して、これに出演しているタレントが驚きの声をあげるという、よくあるパターンです。しかし、L‐カルニチンといえば羊肉の代名詞のような成分で、208.9mgも含まれているので、これを紹介しないのは抜けているのか、わざとやったのかと疑問も出てきます。
しかし、この話を頭から信じてはいけない、ということを言いたくて、あえて羊肉と書きました。羊肉は子羊の肉のラムと成肉のマトンがあります。ラムは軟らかくて、臭みもないので羊肉を食べるならラムという人が大半です。しかし、208.9mgも含まれているのはマトンのほうで、ラムは80mgと牛肉に比べて、驚きの声をあげるような数字ではないのです。