生涯医療費が10年で1.2倍以上に増えた

生涯医療費は一生涯に個人が使う医療費を指しています。病院などの医療機関で支払うのは医療保険を使っての3割負担なり1割負担なので、それほど多くの医療費を使っていないように感じる人もいるようですが、この医療費は医療機関に支払われる金額です。医療保険を使った分を引いた残りの7割なり9割は国や自治体、健康保険組合が支払っています。
生涯医療費のデータは厚生労働省から発表されるたびに関係先に情報発信していて、過去のデータを見比べていれば変化は見えるのですが、単年度の発表だけだと、どんな勢いで増えているのかを気づかないで見過ごすことになります。
最新のデータは2017年12月に発表された2015年のもので、男女平均では2700万円の医療費が使われています。生涯医療費を分析するときには、70歳未満と70歳以上で50%ずつとなっていることを示して、「70歳になる前に健康でいれば生涯に使う医療費が少なくて済むので、健康づくりに取り組むことは本人や家族だけでなく、自治体や国のためにもなる」というようなメッセージにも使われています。70歳を境に50%ずつとなったのは2011年からですが、それ以前も70歳以上では47〜49%と、それほど大きな変動は見られていません。
男女別のデータも発表されていて、2015年データでは男性の生涯医療費は2600万円で70歳未満が53%、70歳以上が47%となっています。これに対して、女性は2800万円で70歳が47%、70歳以上が53%となっています。この差は70歳を超えてからの寿命の長さに関係しているわけですが、長生きするほど病気が増えて、医療費もかかっていることになります。
生涯医療費の推移を見ると、2006年と2007年は2200万円、2008年と2009年は2300万円、2010年は2400万円、2011年と2012年は2500万円、2013年と2014年は2600万円、そして2015年(平成27年)に前年より100万円増えて初めて2700万円となりました。これを見ると、10年間で500万円も増えて、1.2倍以上になっていることから、いかに高齢者の医療費が増えているからわかります。
平均寿命の延びと比較してみると、医療にかかる費用は増えすぎています。それなのに日本老年学会と日本老年医学会は日本人の高齢者は10〜20年前に比べると5〜10歳も若返っているので、「高齢者の年齢を65歳から75歳に引き上げる」ということを提言しています。若返っているというと寿命に影響する生活習慣病が改善されていることが期待されますが、両学会が根拠としているのは歩行数、片足立ち時間、歯数などのデータです。
足腰の丈夫さ、行動力も、もちろん大事な判定基準ではあるものの、高齢者が元気かどうかは内臓の機能、血管の健康も重要です。これに脳の健康も加えたいと思いますが、高齢者が若返っていると安心するのではなく、生涯医療費の上昇を見ると内臓や血管を健康にするための対策に積極的に取り組むべきだということが理解できるはずです。