生薬は“生”なのか

“生”という文字は加熱していないものを指すというイメージが広がっていて、生ビールは加熱処理していないものを指しています。加熱しないとビールは発酵を続けて、ビンビールだと破裂してしまいます。そこで発酵のもとである酵母を取り去っています。それなのにビンの生ビールは、酵母が残っている店で出される生ビールと同じというPRには違和感を感じます。感じはするのですが、今回のテーマは漢方薬の生薬のことなので、これはスルーすることにします。
生薬は天然に存在する植物や動物などの薬効がある産物をそのまま使ったものを指しています。では、生薬ではないものは何かというと、産物から有効成分を精製したものです。生薬の定義からすると、加熱は関係なくて、乾燥しているものは自然乾燥となっています。生というと食品によっては水分が多いものという印象もありますが、生薬は水分量とは無関係です。
生薬といっても、すべてが医薬品として使われているわけではなくて、医薬品医療機器法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)によって医薬品の分類(日本薬局方)に当てはまるものと、食品に分類されています。製剤化されたものは医薬品(生薬製剤)で、それ以外は食品と分類されています。食品といってもイメージとしては健康食品になるのですが、製剤と健康食品では雲泥の差です。
ここまでの情報を出すと、必ずといっていいほど“生”についての疑問が来るのはわかっているので、以下のことを紹介させてもらいます。生菓子というのは加熱の有無は関係なくて、乾燥していない、あまり保存がきかない菓子のことです。生チョコも加熱の有無は関係なくて、クリームが全体量の10%以上のものです。これは公正競争規約にあることで、生クリームは生乳や牛乳を原料としたもの、牛乳などの乳脂肪を濃縮したもの、乳脂肪分が18%以上のものと定められています。一般に純生クリームと呼ばれるものです。この生クリームを使ったのが生キャラメルです。
ハムは豚のもも肉を塩漬けにして成形し、燻煙、加熱したものを指していますが、これに対して生ハムは成形なしで、乾燥、熟成、もしくは低温での燻煙、熟成をさせたものです。