病院給食の食事環境は味の評価を越える

一人ぼっちで食事をするよりも、複数で食事をしたほうがおいしく感じるものです。一人暮らしの人が、家族や知人と一緒に食事をすると、同じものを食べてもおいしさが違います。周囲で元気に楽しく食べている人がいると、誘われて食欲が増すというのはよくあることです。しかし、その集団で食べるところが病院となると、話が違ってきます。病院によっては食事を食堂やデイコーナーなどで食べるのが原則となっているところもあります。食堂まで来られない人、治療のためにベッドを離れられない人の場合は病室で食べるというのが食堂方式の例外です。
この例外を原則にしている病院は実は多く、治療の場、場合によっては排泄の場が食事の場ということにもなります。そこで食べて食欲が湧いて、おいしく食べられるかという問題が一つにはあります。食堂で温かいものは温かい状態で、冷たいものは冷たい状態で食べたいというのは当たり前の希望ですが、それがかなえられる環境づくりには金も手間もかかってしまうので、難しいというところもあります。
食欲が湧きにくい治療中には、できれば好きな時間に食べられるように食事を始める時間が選べるならよいのですが、ほとんどの病院は食事をする時間が決まっています。昼食は12時というのはほとんどで共通していても、朝食は8時、夕食は17時などという昭和の時代の病院給食が、平成を過ぎて令和の時代になっても続いているところも少なからずあります。食事の間隔が短いと、食欲が湧きにくいのは当然のことです。それよりも問題なのは夕食から朝食まで14時間もの空腹期間があるということです。
知り合いの医師が自分で入院してみて、こんなに患者は不便な思いをしていたのか、と初めて気づいたと話していましたが、中でも印象に残っていることとして「暗い顔をして食べている人と一緒に食べるのが辛かった」という言葉です。病室のベッドで食べなければならない人の食事環境を改善するのは相当に難しいということです。