発達栄養学2 脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖

三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質は体内でエネルギーとなります。これ以外の成分はエネルギーとなることができません。三大エネルギー源という言葉は、多くの中から代表的な三つをあげたということではなくて、三つしかない、三つですべてということです。
三大エネルギー源の糖質はブドウ糖に、脂質は脂肪酸に、たんぱく質はアミノ酸に分解され、ブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸ともにピルビン酸、アセチルCoAを経て、細胞のミトコンドリアの中にあるTCA回路に入って、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作り出されます。
細胞の中で作り出されたATPからリン(P)が一つ外れてADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが発生します。このエネルギーは細胞の中でしか使われず、細胞の外に電気のように流れて使われるようなものではありません。細胞は、その中で発生したエネルギーによって生化学反応を起こして、生命維持のための働きをしています。
全身には約60兆個もの細胞があるとされています。全身の細胞は、三大エネルギー源を取り入れて、内部でエネルギーを作り出しているわけですが、例外があります。その例外が脳細胞です。脳細胞につながる毛細血管には、血液脳関門があって、必要なものだけを通過させて、不必要なものを通過させないという機能があります。三大エネルギー源のうち血液脳関門を通過できるのはブドウ糖だけです。そのため、脳細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使うことができないのです。
疲れたときに甘いものを食べると元気が出るのも、甘いものを摂ると頭の働きが回復してくるのも脳細胞に不足したブドウ糖が補われるからです。重要な脳の唯一のエネルギー源であるのに、糖質制限をしてブドウ糖を極端に減らすようなことが起こると、集中力や記憶力が低下したり、気力が続かないようなことになります。それだけではなくて、脳は全身の働きをコントロールしているので、全身の機能に悪影響が出てしまうことになります。
発達障害の自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害、学習障害ともに、脳には強い負荷がかかっています。負荷が強くなるほど脳にはブドウ糖が多く必要になるのです。