発達栄養37 口中調味を可能とする炊飯

日本人は今でこそ世界中の料理を食べられるようになっていますが、基本となるのは米食です。ご飯さえあれば、世界中の料理を食べられます。これはご飯によって料理を好みの味わいに変えることができるからです。ご飯には微妙な味はあっても、白米の場合は、ほとんど味がないのと同じです。
これに対してパンにも麺にも味がついています。主食に味があると、すべての料理に合わせるわけにはいかなくなります。ご飯に合うおかずをパンで食べるのは厳しいというものもあります。「そんなことはない」と反発する人に塩辛とパンを一緒に食べてもらったことがありますが、両方とも好きないのに一緒になると食べられなかったという反応です。
アジア大陸でも、ご飯を主食として食べています。しかし、大陸は硬水地域でカルシウムとマグネシウムが多く含まれていて、日本のように炊くということが基本的にはできません。硬水で炊くと水が充分に浸透しないために芯が残ってしまいます。そこで煮る、蒸す、炒めるという調理法になります。今では炊飯器の性能が向上して、硬水でも芯が残りにくくなりましたが、それでも硬水のために日本のようなふっくらとした美味しいご飯には炊き上がりません。
おかゆは米を煮たもので、白米は味付けなしでも食べられるのに対して、おかゆは味付けがないと美味しく食べられません。蒸すのも炒めるのも味付けが必要です。そのために、おかずの種類も限られてきます。
日本の水は軟水であることから、米に浸透しやすく、普通に炊いても美味しくなります。炊くというのは煮て、蒸して、焦がすという連続した過程で、炊飯器で焦げが残ることはなくなったものの、釜で炊くとおこげができます。おこげの香ばしさがあれば、塩も味噌もなしのおにぎり・おむすびでも美味しく食べられます。
口の中で味を整えることで味覚を磨いてきた日本人の“口中調味”は米を炊くことが可能であったことから生まれた健康の恵みであったということができます。