発達障害にL‐カルニチンは効果があるのか

発達障害は脳の発達にズレがあることから起こる特性で、自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、学習障害に大きく分けられています。社会との交わりが苦手で、普通に暮らすことだけでも心理的にも身体的にも大きな負担がかかっていて、そのために非常に疲れやすくなっています。身体を動かすためのエネルギーは全身の細胞の中のミトコンドリアで作られています。ミトコンドリアはエネルギー産生の小器官ですが、その重量は全身の体重の10%ほどにもなっています。それだけ重要な生命維持のための器官だということです。
三大エネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)のうち主にエネルギーを作り出す材料となっているのはブドウ糖と脂肪酸です。エネルギー量はブドウ糖が約4kcalであるのに対して、脂肪酸は約9kcalと2倍以上にもなっています。ミトコンドリアで作り出されたエネルギーのうち生命維持に使われる基礎代謝は約70%となっています。基礎代謝のうちの約70%は体熱産生に使われています。ということで、エネルギーの約50%は体温を維持するために使われているわけです。
基礎代謝の約30%、全身のエネルギー量の約20%しか心身を働かせるために使われていないということは、心身の活動のために多くのエネルギーを必要とする発達障害の人は脂肪酸を効率よくエネルギー化することが重要となります。ミトコンドリアに脂肪酸を取り込むためにはL‐カルニチンが必要です。脂肪酸はL‐カルニチンと結合しないとミトコンドリアの膜を通過することができないからですが、エネルギー代謝に欠かせない成分であるために体内で合成されています。しかし、合成のピークは20歳で、年齢を重ねるほど体内で作られる量が減っていき、これが加齢による代謝低下の大きな原因となっています。
L‐カルニチンは以前は医薬品としてしか使うことができなかったのですが、今では食品成分として使用することが許可されていて、サプリメント成分ともなっています。発達障害児(18歳未満)は体内に充分にあるのでサプリメントから摂る必要はないのですが、30代になったら摂取することを考えてもよいのではないかという提案をさせてもらっています。