発達障害の“ひきこもり”は“ひきはがし”で解決できるのか

ひきこもりと発達障害は別のものと思われていた時代もあるのですが、「中高年のひきこもりの30%が発達障害」ということが内閣府から発表されてからというもの、ひきこもりは発達障害が原因と考えられるようになってきました。ひきこもりの問題は、なんといっても、ひきこもっている状態です。これを治った、改善したという状態にするためには、ひきこもりを終わらせること、つまり閉じこもっている部屋から出ること、家から外に出るようにすることです。
そのことが実現できたからといっても、ひきこもり問題が解決できたわけではないのに、ひきこもりを解決することを商売にする人まで登場しています。こういう人たちは「ひきはがし隊」とも呼ばれています。この“隊”は「〜したい」という意味を含んでいて、ひきこもりを剥がすように外に出すことを成功させれば、それで仕事は終わり、それで完結ということを実施する人は望んでいるはずです。
それは実施する人の理屈であって、ひきはがしをされる人、つまり、ひきこもりをするしかない人にとっては、とてもではないけれど望んでいることではありません。ひきこもりは“怠け者”“好きなことをしているだけ”“現実逃避”というようなことを言われます。もちろん誤った認識なのですが、何も苦労をしたくないから、楽なことを求めているから、ということではありません。
自分だけの室内にこもってゲームしかしていない人は、それ以外に助かる道がないからです。現実から逃避しているのではなくて、ゲームをして、そのときだけでないとしても、心の安定が得られないために、それ以外の選択肢がなくて、ひきこもっているしか他に方法がないという状態なのです。そのことが理解できないと、無理にでも“ひきはがし”をして、そのためにひきこもっている人が、どんなことを思っていても関係ない、ひきはがしのために状態が悪くなっても関係ない、というようなことを平気でやってしまうということです。