発達障害の人には的確な指示が欠かせない

発達障害の人には、雰囲気を察してやってもらいたい、ということは通じにくいところがあります。単に空気が読めないというような状況ではなくて、指示をしたことを了解しているはずなのに、思ったこととまったく違うことをすることにもなります。これが発達障害児ならわからないでもなくても、社会人となった発達障害者でも思わぬことをすることがあります。
身近なところでは、お風呂場で「お湯を見ていて」と言って期待していることは、浴槽にお湯がたまってきたら、お湯を止めることです。ところが、見ていてと言われると、ずっと見ている、お湯が浴槽からあふれても見続けるだけという、昔のコントのようなことがあるのが発達障害の特徴の一つです。
わざとではなくて、本気でやっている結果です。そんなことがないように、自動で湯量が調整できる給湯システムに変えるということを考える前に、「お湯が、この線までたまったら、このレバーをひねって、お湯が出るのを止めて」と指示をすることです。マニュアルは味気ないとは言われるものの、発達障害の人にはマニュアルのような指示は絶対に必要になることもあるのです。
台所でも「鍋を見ていて」という指示だけだと、ずっと鍋を見続けることになるので、そうでないことを期待するなら、「お湯が沸騰してきたら、コンロを止めて」ではなくて、「コンロのレバーを右に回してガスの火を止めて」と指示します。どうやって火を止めるのかを言ってあげないと、止め方がわからないからと、そのまま見続けることにもなりかねません。
窓を拭くことを指示する場合も、どのような手順で、どこまで拭くかを伝えるだけでなくて、どこまでやったら完成なので終わってよいという、止め時を言っておかないと、いつまでも窓を拭き続けてしまいます。終わったら、終わったことを誰に伝えるのか言っておかないと、次のアクションをしないで、終わったところで動きを止めて、次の指示を待ち続けることにもなります。