発達障害の改善にセロトニンは役立つのか

セロトニンは神経伝達物質で、発達期のセロトニン摂取が自閉症スペクトラム障害の発症メカニズムに関与する可能性についての話題が提供されました。調べてみると、モデルマウスを使った実験の結果だったのですが、これまでにはない研究成果であることから、今後のヒト試験への期待も抱いて情報発信させてもらいました。
研究成果を発表したのは理化学研究所で、社会的コミュニケーション能力の欠如や繰り返し行動が特徴的な発達障害の自閉症スペクトラム障害は、対処療法によって症状が一部は改善されることはあっても、生涯にわたって継続することから、家族の負担を減らし、経済的な負担も軽減させることを願っての研究ということです。しかし、自閉症スペクトラム障害の発症メカニズムは明らかではないものの、15番染色体重複のゲノム異常があることは確認されています。
それと同時に知られているのは、セロトニンが減少していることによって脳の機能に影響を与えることでしたが、セロトニンの減少が、どのように自閉症スペクトラム障害につながっているかについては、まだわかっていませんでした。
そこで研究では、人間と同じ15番染色体重複のゲノム異常のモデルマウスを解析したところ、脳内のセロトニンの減少に関連してセロトニンを供給している中脳の縫線核の働きが低下していることや、セトロニン神経が投射される大脳皮質での感覚刺激の応答異常が発見されました。また、発達期の脳内のセロトニンの量を回復させることで、縫線核と大脳皮質の電気生理学的な異常を改善させることが確認されています。そして、15番染色体重複モデルマウスの成長後にセロトニンの量を回復させることで、社会的行動異常も改善することが明らかにされました。
このことから、セロトニン神経系の働きを盛んにさせることで、自閉症スペクトラム障害の一部が緩和されることが明らかになり、今後のセロトニンと発達障害の緩和の研究に大きな期待が寄せられることとなったわけです。