発達障害は空気が読めない存在なのか

「空気が読めない」というのは発達障害の人に限らず、また若者だけでなく、社会全体に広がっていることです。発達障害の特性として、空気が読めないということがあげられることが多く、発達障害は10人に1人とされていることを考えると、空気を読めない人が社会全体に広がってきているのも感覚的には理解できるところです。
発達障害は本人のせいでも親のせいでもないとされることから、他人との交流がうまくいかない人は、自分のことを発達障害だと発言する人も少なくありません。発達障害なら誰でも空気が読めないと勘違いされていることもあるのですが、空気が読めないという特性がみられるのは自閉症スペクトラム障害のほうで、注意欠如・多動性障害のほうは人付き合いで何をすべきなのかということはわかっているけれども、自分の感情や欲求が抑えられずに対人関係を壊すような言動をしてしまうという特性があります。
注意欠如・多動性障害は、じっとしていられない多動性、やりたいことが我慢できない衝動性、集中力がない不注意に大きく分けられますが、その場の空気は読めています。それなのに「空気が読めない」と発言するのは、一つには自閉症スペクトラム障害が併存していることが考えられます。発達障害の自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、学習障害は完全に分類されたものではなくて、重なり合っていることもあります。
もう一つは、自分のことがわかっていないために起こっているという考え方で、先にも触れたように対人関係を壊すようなことをしているのに、それを理解していない、理解しようとしないということがあげられます。実は発達障害ではなくて、対人恐怖症、社会不安障害、社交不安障害という場合もあります。周囲の気づかいや労りがあっても、それを理解して交流を進めることができないので、「その場の空気が読めない」のではなくて、「状況としての空気が読めない」ということが指摘されているのです。