睡眠学習は寝ている間に学習することなのか

子供のころ、といっても、もちろん年代によって大きく異なります。日本メディカルダイエット支援機構の主要メンバーの50年前の話になりますが、“睡眠学習”が流行ったことがあります。流行ったどころか、親の教育熱心のために大学受験を控えた高校生までやり続けたと話すメンバーもいます。睡眠学習は、寝ている間に覚えたいことをテープレコーダー(今は懐かしい)で流しておくことで、その内容が意識をしていなくても脳に刻み込まれて、寝ている時間も学習に当てられるという便利な学習法ということが喧伝されました。
それが今の睡眠学の研究では、完全に間違っていたということではないものの、寝ている間に聴いたことのすべてが脳に入るというのは間違いだということがわかっています。記憶は目覚めているときよりも睡眠中のほうが保持率は高いという海外の研究成果はあったのですが、これが誤って伝えられたのが日本の睡眠学習だったのです。
記憶したことは、そのまま脳の中に蓄積されるのではなくて、これは机に例えると雑然と机の上に並べられた状態で、その雑多な情報を引き出しの中に整理していくのが寝ているときだということですが、その記憶の整理は常に行われているわけではなくて、睡眠中のレム睡眠のときです。睡眠はレム睡眠という眠りが浅くなって眼球が動くRapid eye movement sleep(REM)と、眠りが深くなって眼球が動かないノンレム睡眠(Non- Rapid eye movement sleep)があり、夢を見ているのはレム睡眠のときです。このレム睡眠のときに、脳の過去の記憶を引き出し、新しい記憶と組み合わせて整理して収納します。
新たな記憶は過去の関連する記憶と組み合わされるもので、新たな記憶が入ってこないと古い情報は必要のない情報として消去されます。寝る前に(その時間帯に限らないのですが)記憶したことは寝ている時間帯のレム睡眠のときに脳に刻み込まれていきます。睡眠は90分周期でレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しているので、7時間半の睡眠では5回の記憶のチャンスがあることになります。睡眠時間が短いとチャンスが減るので、しっかりと寝ることこそが今どきの睡眠学習ということです。