社員が買いたがる社内販売

ある健康食品会社の社長と話していたときのこと、「うちの社員は自分のところの商品を使ってくれなくて……」と嘆いていました。社長は開発者でもあって、商品には自信を持っていて、それなりに売れているので効かないわけがないのに、なぜか社員が使ってくれないということですが、売れているというなら“効くと販売トークとして言うだけで本人が信じていないのか”それとも“社長を除いた全社員がよほど健康なのか”、どちらかでは、との話をしたものです。
まさかと思って、「社員割引はしていますよね」と聞いたところ、少なくとも半額にしているといいます。賞味期限の2年間に対して、あと半年を割ったものは、もっと安くしているとのこと。健康食品の賞味期限は一般的には2年間ですが、2年どころか3年をすぎても問題がないものが多く、半年前なら充分に安心して使えるのが大半です。それなのに社員が使っていないとなると、「信じて売っているのか」と思われても仕方がないことです。
値段の問題ではなく内容の問題ということになりそうですが、その健康食品が社会的ニーズというか、社員のニーズに合っているかということもあります。高齢者向けの商品を販売していて、社員が若者だけ、社員の家族も親も一緒に住んでいないということだと、その社員としては必要のないものということになるかもしれません。この話に登場する会社の商品は、高齢者を意識しているものの、若い人が摂っても意味がないというものではないので、この考えも当たっていません。
これに対して、私どもの会員の会社では、まったく逆のことが起こっていて、社員の購入率が高くて、事情があって会社を辞めた人でも商品だけは割引で使わせてもらいないかと言うくらいで、会社としても社内販売と同じに扱っています。その商品は代謝に関わるもので、若い人は活力やスポーツパフォーマンスに、少し年が進んだ女性には肌の悩みの解消に、中年はメタボ対策に、高年ではロコモ対策にと幅広い効果が認められています。その効果はグループの研究機関で確認されているので、社員が自信を持って話し、販売することができるものばかりです。
ここまではいかなくても、社員が自信を持って紹介するし、自分も使いたいから、販売に力を注いでいるということができれば、会社の中に優秀なモニターがいるのと同じことになり、よりよい商品の開発、使い方指導、悩み相談ができるようになります。健康食品は万人に愛され、万人に効果があるものであれば、それに越したことはありませんが、まずは社員に愛される商品であって欲しいと考えたりします。もちろん、万人に結果の出るもので、社員が愛せるものなら、もっとよいことです。
以前に、「自社の商品のよさを社員に伝えたいので、商品と結びつく健康の話をしてほしい」という依頼がありました。あまり本当のことを知ってしまうと社員のモチベーションが下がることもあるので適当なところで止めておこうかと言ったところ、「うちの社員に、そんなのは一人もいない」と社長は自信満々でした。そこで思う存分の話をしたら、セミナー途中からざわつきがあり、話をして1か月ほどで何人かが退職をするということがあって、その後に予定していた購入者向けのセミナーが中止になったという“困った”ことも経験しています。