粉茶でポリフェノールを摂ってもよいのか

これまで、このコーナーでも抗酸化の話の中でも繰り返し茶葉と粉茶の違いを紹介して、粉茶の選び方を間違ったら大変、自宅で茶葉を粉茶にするのはやめたほうがいいという話をしてきました。これはメディア関係者には、本来のテーマと違うことで会っても、安全性を絡めて必ず伝えてきたので、そろそろテレビでは違う伝え方がされてもよいはずなのに、よく知っているディレクターが所属しているプロダクションが制作している番組でも、注意喚起なしで「ポリフェノールは粉茶で効果的に摂れる」と断定的に取り上げていました。さすがに全国放送の人気番組だけあって、その後に粉茶にするミル(粉砕器)が売れている、うちの店でも取り寄せて店頭に並べたという話を聞くと、まだまだ続けて言わなければならないと思い、今回の文の掲載となりました。
番組では有名な総合病院の嗜好品外来を紹介して、その流れでドクターがチョコレートのカカオポリフェノールが血圧の上昇を抑えるのによいという話をしていました。それに続いて、他のポリフェノールが豊富に含まれる食品の話題となって、緑茶の抗酸化成分のカテキンがよい、抽出されたお茶には茶葉の成分の30%ほどしか含まれていないので効果的に摂るためには茶葉を砕いた粉茶のほうがよいという話に持っていっていました。これが正しい話であることは認めます。
しかし、茶葉から淹れたお茶と、茶葉そのものを飲む粉茶では安全性のためにチェックすることが違っています。茶葉には栽培の段階で農薬が繰り返し使われています。虫食いの茶葉など許されないからです。農薬を使った茶葉には農薬が残ったまま販売されているわけです。
ところが、普通にお茶として飲む場合には問題はありません。茶葉に使われている農薬は2タイプあり、そのうちの水には溶けないタイプの農薬が使われています。もう一つの水に溶けるタイプの農薬だと雨が降ったら流れ落ちるからです。そこで水には溶けずに油に溶ける農薬が使われています。この農薬なら、お湯を注いで飲んでも、お茶の中に溶け出すことはないわけです。お茶の中には少しは茶葉も混じることはありますが、それを避けて飲むか、飲んでしまっても、ごく少ない量でしかないので問題なしのレベルと判断されます。
では、粉茶は農薬が残留していて危険なのかというと、抹茶のように初めから、すべてを飲むものは無農薬で栽培されるのが大原則です。だから農薬の心配はしないでよいわけです。ところが、お湯を注いで飲むための茶葉を自宅でミルを使って粉にしたものは農薬が残っているので、農薬ごと飲んでしまうことにもなります。使うなら無農薬の茶葉を選ばなければならないわけです。
今回の番組ではないのですが、自宅で粉茶にして、それを抹茶のようにして天ぷらにつけて食べることをすすめていた番組がありました。また、出がらしの茶葉には70%の成分が残っているからと、これを天ぷらの材料にして食べるとよいと紹介していたことを覚えています。茶葉に使われている農薬は油に溶けるタイプです。天ぷらにしたら農薬は油に溶けて、吸収されやすくなってしまいます。
この原稿を見てもらうように付き合っているテレビ関係者にも伝えますが、こんなことを再び書かなくて済む日が早く来ることを願っているところです。