糖尿病と糖質制限で脳がエネルギー不足になる

脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖だということは、何度か紹介してきました。ブドウ糖が脳に必要だということは、血糖値が高い糖尿病の人は脳細胞にブドウ糖が多く取り込まれて、脳の働きがよくなるのではないかと感じている人がいるかもしれません。しかし、実際には血糖値が高い人は、脳細胞に取り込まれるブドウ糖の量が減ってしまいます。脳細胞に限らず、全身の細胞に取り込まれるべきブドウ糖が取り込まれなかったために、血液中のブドウ糖が多くなっているということです。ちなみに血糖値は血液中のブドウ糖の値のことで、ブドウ糖の量が多くなるほど血糖値は高くなります。
糖尿病の人は認知症のリスクが高いとの研究成果があり、その理由として脳細胞にブドウ糖が充分に取り込まれないことがあげられています。糖尿病の人は、ブドウ糖が含まれる糖質の摂取量を制限されます。糖質(ブドウ糖)の摂取量が少ないと血糖値が下がるために、糖尿病の人は糖質を大きく減らしたほうがよいとも考えられがちですが、ただでもブドウ糖が脳細胞に吸収されにくい人に、ブドウ糖を減らしてしまったら、ますます脳細胞がブドウ糖不足になって、脳細胞がエネルギー不足になります。糖尿病は細胞の飢餓状態ということができます。
細胞はブドウ糖を使って、エネルギーを作り出しています。そのエネルギーが細胞を働かせているので、ブドウ糖不足は細胞の働きを低下させます。脳細胞以外の細胞は脂肪酸もアミノ酸もエネルギー源とすることができるのに対して、脳細胞はブドウ糖だけしかエネルギー源とならないので、あまりに糖質制限をしてしまったら、脳細胞が充分な働きができなくなります。脳細胞の機能低下というと記憶力、集中力などの低下を思い浮かべるかと思いますが、脳は全身の働きをコントロールする重要な器官です。そのために、脳細胞のブドウ糖不足は全身の機能を低下させることになるだけに、糖質を制限することが健康の秘訣とは言えないということだけは、わかってほしいのです。