糖尿病と食物繊維摂取の変化

糖尿病になると、ブドウ糖が多いご飯の量を減らすように医師から指示されて、ご飯を食べるなら玄米にしようということで、玄米を炊ける高圧鍋を購入したということを、よく聞いた時期があります。その時期というのは今から40年以上前のこと、電子レンジが出はじめたころで、玄米をたくさん炊いておいて、冷蔵したものを電子レンジで温めて食べていた、という父親の例を日本メディカルダイエット支援機構の理事長が話していました。なぜ玄米なのかというと、食物繊維のために消化に時間がかかり、ご飯の糖質が分解されるのに時間がかかった分だけブドウ糖が吸収されるのにも時間がかかり、血糖値の上昇がゆるやかになります。糖尿病は血糖値の数値だけが注目されていた時代には、これは正しい指導だったのかもしれません。
ところが、栄養学の研究が進む中で、食物繊維が含まれた玄米を食べなくても、食物繊維が多い野菜を食べて、ご飯は白米でも構わないということが指示されて、食卓のシーンが変わりました。それまでは家族が一緒に食卓を囲んでも、父親だけが違うものを食べていたのが、一緒のものを食べて、その量だけを変えればよいということになったということです。
そのあと、さらに研究は進み、血糖値の上昇を抑制するのは食物繊維の中でも玄米や野菜に多い不溶性食物繊維よりも、水を吸って膨らむ性質がある水溶性食物繊維のほうであることがわかりました。水溶性食物繊維というと「こんにゃく、きのこ、海藻、果物」と栄養指導の冊子に書かれていたことから、こんにゃくが食卓に並ぶ家庭が増えたものです。
水溶性食物繊維が血糖値の上昇を抑えることは正しい情報ですが、こんにゃくは後々の研究で水溶性食物繊維の性質が保持されるのは粉の状態であって、凝固剤(水酸化カルシウムなど)で固めたこんにゃくは不溶性食物繊維と同じ状態になってしまいます。それがわかってから「きのこ、海藻、果物」と表示されるようになりました。果物の水溶性食物繊維はジャムになる部分です。
血糖値が高めの人にすすめられる特定保健用食品や機能性表示食品に使われている難消化性デキストリンは水溶性食物繊維です。これよりも有効性が高いことが研究によって確認されているのはシクロデキストリンです。難消化性デキストリンとシクロデキストリンについては、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。